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いよいよ75歳以上の「医療費負担引き上げ」に…菅政権「現役世代」への配慮のワケ

約23%の後期高齢者が対象

現役世代は約720億円の負担減

2月5日、政府は75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担について、年金を含む年収が200万円以上の人を対象に、これまでの1割から2割に引き上げる改正案を閣議決定した。

これまで、後期高齢者の窓口負担は原則1割で、年間の収入が383万円以上の人は3割を負担することになっていた。

今回は新たに2割負担の枠を「新設」する格好だ。単身だと年収200万円以上、複数人世帯では合計320万円以上の人が対象になる。いわゆる「団塊の世代」が来年以降に、後期高齢者になり始め、医療費のさらなる増大が見込まれることを想定した措置だ。

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現在、75歳以上で単身年収200万円以上の対象者は約370万人、後期高齢者全体の23%だ。そして2割負担による年間の負担増は、約3・4万円と推計されるため、年収の2%以下だ。

これにより、現役世代は約720億円の負担減となる。現役世代を20〜64歳とすれば、人口は約6900万人。頭数で割ると、今回の負担軽減は一人あたり年間約1000円ほどである。

現役世代は後期高齢者の医療費を賄うために、年間で7兆円を負担している。医療保険の性格上、健康な人から病気の人への所得移転は当然であるので、結果として医療保険は若者から老人への所得移転にならざるを得ない。

そうしたバランスは常に考慮する必要がある。1月18日の菅義偉首相の施政方針演説では、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という構造を見直し」という表現があった。歴代政権の中ではかなり思い切った表現だ。

というのも、高齢者は選挙の投票率が高いので、高齢者への配慮は常に最優先されてきたからだ。

実際、後期高齢者の2割負担の実現については、与党自民党と公明党との間で、長きにわたり激しい議論が繰り広げられてきた。今回は、高齢者の負担を抑えたい山口那津男代表を、若者の負担を少なくしたい菅首相が押し切った形だ。

 

これに限らず、菅政権はこれまでの政権と比較して、将来世代への投資が目立つ。施政方針演説の中にも、グリーン投資、デジタル投資、大学ファンドが列挙されており、それぞれ2兆円、1兆円、10兆円という具体的な数字も示されている。

将来への積極的な投資。この考えは、アメリカのバイデン政権も同様だ。たとえば、現在の歴史的な低金利環境を生かして「50年債」を発行し、その資金を長期的な投資に回そうという案もある。

要するに、新型コロナで経済は落ち込んでいるが、金利も下がっているので、投資機会は増す。それを活かそうという算段だ。

医療費は、高齢化とともに増加せざるを得ず、それを破綻なく支えていくためには、経済成長が欠かせない。そして、成長に必要なものは、現役世代の負担軽減と将来への投資だ。だからこそ、高齢者と現役世代へのバランスの取れた目配りが必要になってくる。

その点、菅政権はこれまでの政権が置き去りにしてきた部分に積極的に取り組もうとしていると言えるだろう。

『週刊現代』2021年2月20日号より

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