48歳、夫婦でフィンランドへ。収入は大きく減った

いつしか「JEFF」は半年先まで予約が埋まるようになり、それに比例して収入も大きく伸びた。しかし、45歳を過ぎた頃から、自分の時間を削って仕事にまい進する日々に焦りが生まれるように。

「1日12時間労働、週休1日で突っ走ってきたので、気持ちが追いつかなくなり、一度ゆっくりとインプットしなければと思ったんです。長期休みを取って、コーヒーを飲みながら散歩するのにピッタリのヘルシンキを訪れました」

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現地では、日本人コーディネーターに依頼してヘアサロンも見学。そのコーディネーターの女性が、後に梅沢さんの雇用主となる。彼女から「現地の日本人が自分にマッチするヘアサロンを見つけられず困っている」と聞き、何度かヘルシンキでの出張ヘアサロンを経験した後、原宿の店舗を閉鎖し、正式な移住を決めた。

現地での出張ヘアサロンは数人の日本人美容師と一緒に行った。対応しきれないほどの大盛況ぶりだったという 写真/梅沢さん提供

「移住した当時は48歳。50歳が迫っているけど、まだ余力はある。圧倒的に移住したかったわけではなく、新しいことを知りたいワクワク感が少し勝ってしまったんです。作り込んだキラキラした街並みの東京を離れて、都会と自然のバランスが絶妙なこの地でどんなアウトプットができるのか、自分の変化にも期待したくなった」

当時10年ほど連れ添っていた妻に「フィンランドに移住する」と話すと、梅沢さんの強い意思を感じ取ったのか、すんなりと一緒に移住することになったという。

移住後、梅沢さんの生活は一転。経営者から雇われ美容師へ、週休1日から2日へ。1日12時間から8時間労働へ。ほぼゼロだった長期休みもしっかり取り、夏休みは1ヵ月店を閉める。高福祉を得る代わりに収入は大きく減った。

2020年4月撮影のヘルシンキでの夕暮れ。自然が豊かなこの街では、散歩中に目を奪われるような景色に出会えることも 写真/梅沢さん提供


「東京では、いいギターやジャケットを買って物欲を満たすことで一時的な幸福感を得ていましたが、こちらに来てからの幸せは地味だけど日常にあふれている感じ。スーパーで買い物をする、森をゆっくり散歩する、丁寧に料理を作るとか普通のことをしみじみ幸せだと思える。東京にいたときは、スーパーで買い物する時間なんてムダだと思っていたのに(笑)」

生活レベルを落とすのは難しいと聞くが、ストレスはないのだろうか。

「質素な生活を楽しむというと貧乏を美化したように聞こえるかもしれませんが、不思議と物欲が湧かなくなり、家事をしている時間さえいいリフレッシュになるんですよ。街の散策や散歩など、お金を使わずに楽しめることが多いので、貯金に回すことさえできているんです」