カット単価9,000円、激戦区で人気店を経営

ものづくりに興味を抱いたことがキッカケで美容専門学校へ進学した梅沢さんは、卒業後、青山のヘアサロンで修行を積み、29歳のとき原宿に共同創業のヘアサロンをオープンした。

ヘルシンキの中心街から少し離れた静かな場所にある「JEFF」は、梅沢さんがすべての工程をひとりで接客 写真/梅沢さん提供

「原宿や表参道といった激戦区の経営者は、残るべくして残ったような実力者ばかり。目標としていた30歳までの独立を叶え、『トップになってやる』と野心にあふれていました。ギラギラの原宿マインドを持ち、雑誌のヘアメイクなど派手な仕事を好んでいました」

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ところが、2店舗目を持つという次の目標を達成しないまま、梅沢さんは大きく働き方を変えた。

「転機は東日本大震災。東北出身のお客さんから実家が流されたお話などを聞くうちに、『いつ死ぬかなんて本当にわからない、後悔しない生き方をしなければ』と思うようになり、自分が本当にやりたいことを見つめ直したんです」

サロンの場所、接客スタイル、使用するシャンプーやカラー剤など、サービスにまつわる一つひとつに対して、自分自身でベストな選択を下し、こだわり抜いた純度の高いサービスを提供したい。それが梅沢さんの理想の経営スタイルだったが、共同創業でスタッフを8人ほど抱えていた当時は周囲との調和が求められ、望む経営スタイルは叶わなかった。

ボブスタイルの女性の後ろ姿を描いたロゴは、国内外で活躍するイラストレーター・Noritake氏が担当。店のアイコンとなっている 撮影/小林香織

その後、チームを解散しひとりになった梅沢さんは、2012年、原宿に個人経営のヘアサロン「JEFF」をオープン。心機一転して再出発を切った。思い通りのサービスを提供し、徐々に予約でいっぱいになる人気店に。6,000円からスタートしたカット価格を7,000円、9,000円と引き上げ、スタッフを増やさずとも売上を伸ばしていった。

「7,000円から9,000円へ値上げする際は心が揺らぎましたが、価格を上げることで自分自身の仕事の質がどう変わるのか挑戦したい気持ちが強かったんです。結果的に挨拶から掃除の仕方、カウンセリングの質にも変化が生まれ、だからこそ値上げにより顧客を失うこともなかったのだと思います」