目と耳が2つずつ、鼻と口が1つずつ。よく見ると、人間の顔は複雑なつくりをしている。
しかしそもそも「顔」はモノを食べるためにできた器官だった。例えば脊椎動物の原型であるナメクジウオの「顔」には、口はあるが、目や鼻はない。
当たり前だと思っている「顔」は、進化の末に完成したものなのだ。あなたの顔にも、生命の歴史が刻み込まれているのである。
なかでも、鼻毛は進化の最前線を行く存在だ。実は鼻毛が生えているのは人間だけだ。約700万年前に誕生した人類の祖先、猿人は森林の中で暮らしていたが、食料を求めて次第に草原や砂漠に進出していった。
ただ、猿人はある問題を抱えていた。砂埃が鼻から入り放題だったのだ。
これを防ぐために生まれたのが鼻毛だ。鼻の軟骨が隆起して周辺の皮膚が引きずり込まれたことで、毛が鼻の中に取り込まれた。
こうして誕生した鼻毛は優秀な「空気清浄フィルター」の役割を果たしている。と同時に、鼻の穴の中の湿度や温度を保ち、粘膜が乾燥するのも防いでくれる。