その週は月曜日から連日大きな撮影が続き、朝から晩まで仕事でもプライベートでもキッチンで過ごす毎日。そんな金曜日の夕方のこと……。仕事終わりに、塾に行く長男のお弁当を詰め、長女と一緒に翌日の食材の買い出し&次女の保育園のお迎えに。

「今日はいつもの炒め物と具だくさんのスープでいいか」

そう思いながら子ども 人を連れて大量の食材を抱えて帰宅。妻はまだ仕事で外出中。 帰宅直後から始まる次女のエンドレス「あしょぼあしょぼ(遊ぼ遊ぼ)」攻撃。部屋中に散らかる子どものおもちゃやランドセル。後で保育園の着替えも洗濯してお風呂掃除もしなければ。やらなければいけない仕事もまだ残っているのに……。

〔PHOTO〕iStock

そんな状況の中、いざ料理に取りかかろうと思ったその瞬間、僕はこう思ったのです。

「土井先生、今日は一汁一菜も無理です……」

いつもは簡単に思える「炒め物と具だくさんのスープ」。ところが、その日は野菜を洗う気持ちにもなれなかったのです。

ご存じの方も多いと思いますが、尊敬する大先輩の料理研究家の土井善晴先生が著書『一汁一菜でよいという提案』で、世の中の献立に悩めるみなさんに大きな勇気を与えてくれました。ごはんを炊き、具だくさんの味噌汁を作り、あれば塩気として漬物を添えて、それでちゃんとバランスのとれた食事になる、と土井先生はおっしゃっています。

なのに、日本の食卓の希望、「一汁一菜」ですら作れない僕は料理家以前に人間失格なのでは? 生まれてすみません、と自己嫌悪に陥る僕……。

でもみなさんもこんな経験ありませんか?

家庭料理においてもっともシンプルで無駄のない一汁一菜。つまり、ごはんと、具だくさんの味噌汁とお漬物など。それですら、時と場合、自分のメンタルの状態で、「無理!」と思う。その日の晩ごはんは結局、子どもたちの熱い要望に応えて宅配ピザとなりました。晩ごはんの食材を買ったうえ、さらなる出費ではあったけれど、僕も楽できたし、子どもと楽しく食べられたので「ま、いっか」と思った夜でした。

土井先生、どうかお許しください。そしてこんな迷える子羊の僕に対しても、「そんなんでええんですわ」とやさしいお言葉、かけていただけますよね?