女は察する、男は察せない

結論から言えば、美咲が口をきかなくなった理由は、誠の態度だ。

美咲のレンチン料理に、「オレこういうのあんまり食べたことないや」と言う。美咲の家事に、「いったい今日なにしてたの? 一日家にいるんだからいろいろできるでしょ」と言う。バスで子どもがぐずり、乗客に嫌なことを言われたと美咲が愚痴ると、「それはママが悪いよ。ぐずったらすぐに降りなきゃ」と言う。美咲が体調を崩すと、「いつになったらよくなるの? オレあしたは仕事だから それまでによくなってよ」と言う――。

『妻が口をきいてくれません』より

美咲の怒りと失望は当然だ。誠が無神経なのも100%ギルティである。しかし、誠は納得がいかない。それだったら無視なんかしないで、はっきり言ってくれればいいじゃないか。そうすれば謝るのに、と。

これはもう、男性と女性の絶望的な「察する力」の違いが引き起こす悲劇としか言いようがない。これまで多くの男女から離婚の経緯の詳細をヒアリングしてきた筆者はそう考える。女性は非言語コミュニケーションで相手の感情を察する能力が高い。対して男性は、女性から「私は、あなたのこの部分に怒っているの!」と、その都度具体的に説明してくれないとわからない。だから「その程度のことすら、察してくれない」夫に、妻は激怒する。

男女のこの違いは、どう頑張っても基本的には変わらない。努力できることがあるとすれば、妻が夫に自分の感情を具体的に説明する、あるいは、夫が「過去に妻が怒ったこと」をリスト化して日々暗記に励むことくらいだ。その努力をする気がゼロになった時が、“離婚どき”である

しかし、筆者が取材した中には、努力する気がとっくに失せているのに何年も離婚しなかったケースが相当数あった。「子供のために離婚しない」「自分または相手の収入の問題がある」というならともかく、そうではないものも多い。なぜ彼らは離婚しなかったのか?