「繊細すぎる」のは欠陥という見方を覆したのは、研究者のこの気づき

HSPの提唱者は自分も悩んでいた
スーザン・ケイン プロフィール

たったひとりで何時間でもドライブできる

土曜日の午前中、アーロンがバックアイ・ロッジに現れた。ストリックランドが紹介するあいだ、彼女はフリップボードを立てかけたイーゼルの後ろに、茶目っ気たっぷりに隠れていた。そして、さっと登場した彼女は、ブレザーにタートルネック、コーデュロイのスカートという、センスのいい姿だった。小柄で茶色の髪、何事も見逃さないような青い目をしている。高名な学者でいながら、どこかにおずおずした学生時代の姿を感じさせるところがある。そして、参加者たちに敬意を払っているのが感じられた。

さっそく話しはじめたアーロンは、討論の題材として用意したサブトピックを五つ紹介し、参加者全員に第一希望から第三希望まで挙手させた。そして、複雑な計算をまたたくまにやってのけ、希望者が多い順に三つ選んだ。参加者たちはすなおに従った。どのトピックが選ばれようが、問題ではなかった。今ここにアーロンがいて、敏感さについて語ってくれること、そして、彼女が私たちの意向を汲んでくれたこと、それだけで十分だった。

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アーロンは少女時代に、「あまりにも敏感すぎる」と何度も言われた。上の二人のきょうだいとはまったく違う性格で、空想を楽しみ、室内で遊び、傷つきやすい心を持った子供だった。成長して社会へ出るようになるにつれ、自分自身が世の中の典型的な行動様式からはずれているのに気づくようになった。彼女はたったひとりで何時間も、ラジオもつけずにドライブできた。非常に鮮明でまるで現実のような夢を、ときには悪夢を見た。「奇妙なほど集中」することがあり、肯定的にせよ否定的にせよ感情が大きく揺れ動くことに悩んだ。日常生活のなかに尊敬できるものを見出せず、そうしたものは空想の世界にだけあるように感じていた。

成長したアーロンは心理学者になり、たくましい男性と結婚した。夫アートは、クリエイティブで直観力があり深く考える彼女の性質を愛した。彼女自身もそうした性質を評価してはいたが、自分は「心の奥底に隠している致命的な欠陥を、表面上なんとか取り繕っている状態」なのだと考えていた。欠陥がある自分をアートが愛してくれたのは奇跡だと思っていた。

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