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人類はどこから来てどこへ行くのか? 世界を進化の尺度で眺めたら

熱気にあふれた「伝説の東大講義」から学ぶ
世界を進化のダイナミズムの相の下に見ること。それこそが、人類の未来を見定めるために必要な態度である――。

1996年の夏学期、東京大学教養学部で行われた伝説の講義が、ついに書籍化! 今月の新刊、立花隆『サピエンスの未来』より、「はじめに」を特別公開。

世界のすべては進化の過程にある

この本で言わんとしていることを一言で要約するなら、「すべてを進化の相の下に見よ」ということである。「進化の相の下に見る」とはどういうことかについては、本文で詳しく説明しているが、最初に簡単に解説を付け加えておこう。

世界のすべては進化の過程にある。一般に進化というと、生物進化のことだと思われがちだが、進化するものは生物だけではない。万物が進化するのだ。物質も進化する。物質が進化したからこそ、生命も誕生したのである。

宇宙も進化した。宇宙が進化したからこそ、宇宙はビッグ・バン時代のままにとどまらず、銀河系が生まれ、太陽系が生まれ、地球が生まれたのである。

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人間社会も進化してきた。だから、この地球のほとんどどこでも、古代専制国家はなくなり、奴隷制社会はなくなり、封建主義国家もなくなっている。

あるいは、人間が使う技術も進化してきた。旧石器時代は新石器時代となり、土器が使われる時代になり、青銅器、鉄器の金属器を使う文明の時代がはじまった。

文明史とは、ある意味で技術史であり、技術史をひもとくと、技術はあらゆる側面において進化をとげてきたことがわかる。

たとえば、約一万年前の農業のはじまり(農業革命)以後、農業技術が、道具の発達、耕作法、肥料、農薬、種の改良など、周辺技術の進歩にともなってどんどん進化し、生産効率が大幅に上がった。

それによって、農業がはじまる前の世界人口はわずか500万〜600万人程度にすぎなかったのに、いまや、その1000倍以上の約60億人(1998年当時。以下同)分の食糧を作り出すことを可能にしている。

動力源が人力、畜力、風力、水力などの自然エネルギーから蒸気機関、内燃機関などに進化したとき、動力機械の時代(産業革命)がはじまり、それが産業の様相も生活の様相も、社会のあり方も一変させてしまった。

間もなく電気の時代がはじまり、やがて電気がもっぱらパワー源として利用される強電の時代から、電気回路、電子回路として利用される弱電の時代に進化すると、それによって実現される機械の精緻な制御が再び産業も生活も一変させた。

電子回路がコンピュータを生み、コンピュータが単なる計算機械から、あらゆる情報を処理する総合情報マシーンに進化したとき、情報革命の時代がはじまり、人間社会のあり方は再び一変しつつある。通信システムも輸送システムも情報化され、産業全体、都市システム全体が情報化されつつある。

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