仮住まいへの引っ越しの荷造りをしたのは…

義母の予想外の行動にショックを受けつつ、こちらも新居を作る準備をせねばならなかった。住み慣れた街から数キロ離れた場所に手頃な土地を見つけ、確保。調べ抜いて、ある住宅メーカーで木造住宅を建てることになった。

義母のほうでは家の買い手が見つかり、退去の準備に入った。しかし、荷物の整理が進まない。私たちが遠路はるばる通ってやっても大してはかどらない。物が多すぎたのだ。二世帯住宅で暮らすのだから、もともとある家財道具を全部残しておくわけにはいかないと話しても、処分したがらなかった。手が足りないから、近くに住む親戚に手伝いを頼もうと考えたが、義母は気がすすまないようだった。

あるとき実家を訪れると、段ボール箱がずいぶん増えていた。親戚がやってくれたのかと訪ねると、義母はすました顔で「Sさんにやってもらったんだよ」と答えた。Sさんとは、近所の工務店のおじさんである。親しい間柄だから、少し手伝ってくれたのかと思ったが、よくよく状況を聞いて驚愕した。荷物整理の大半を、Sさんに押し付けていたのだ。工務店の本来の業務もあるのに、ほぼ毎日呼びつけていたのだった。

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いくらなんでもそれはないだろうと咎めると、義母は「いいんだよ、あの人だって好きでやってるんだから。『暇だからいいよ』って言うんだもの。盆暮れに菓子折りのひとつも送っておけばいいさ」と言い放った。呆れて二の句が継げなかった。工務店には、お礼とお詫びに行った。確かに人の良さそうなおじさんだったが、何度も呼び出されることには戸惑っているようだった。

不思議だったのは、義母が親戚を信頼せず、赤の他人のほうを頼りにしていたことだ。Sさんにはさんざん甘えていたが、近くに住む実の妹たちには、声をかけたがらなかった。

その後、仮住まいを探した。実家からさほど離れていない場所で、安い家賃の団地を見つけたが、義母は嫌がった。「新築じゃなきゃ住みたくないんだよ。誰が触ったかわからないんだよ。垢がついているかもしれないじゃない。気持ち悪い!」と抵抗する。いくら「仮住まい」なんだからと説明しても、なかなか受け入れなかった。退去までの残り時間と、家ができるまでどのくらいの日数がかかるか細かく説明すると、渋々団地への引っ越しを認めた。