有利なはずの条件から、まさかの結末!

知人に紹介された不動産屋Aが実家にやってきた。1階から2階の隅々までよく調べ、外から外壁なども確認した。丁寧に見るものだなあと感心していたが、どの程度で売れるものかはいろいろ調べてから返事をするとのことだった。数日後、業者Bも家を見に来た。もちろん細かく丁寧に見て帰っていった。

夫はどちらの業者にも、大きな取引だし事務的な手続きも多いから、義母ではなく自分に連絡をくれと伝えた。どう考えても、義母がまともなやりとりをし、判断できるとは思えなかったからだ。

返事は、Bのほうが先だった。総合的に見て、2千万は下らない価格で売れると言われた。不動産に詳しい知人に話しても、そのあたりが妥当な金額だろうとのことだった。Aからの返事を待って最終判断をすることにした。

ところが。

ある晩、義母から電話が入った。受話器を取った夫が一瞬で血相を変え「なんだよそれ!」と怒鳴った。私たちの知らないうちに、義母は売却の契約をしてしまった。1500万円ほどだから、もう1軒の業者より比べ物にならないほど安い金額だ。不動産屋Aが何度も義母に電話をかけ、こちらに連絡を取らせずにサインさせてしまったのだった。話はかなり進んでしまい、手遅れだった。もちろん、Aから夫には電話の一本もなかった。

不動産業者は直接なんども義母に連絡をしてその場で契約をしてしまった Photo by iStock

「どうして一度もこっちに相談しないんだ!」夫は怒り心頭に発し、義母を問い詰めた。すると義母は、
「だって、何度も電話をしてきて、とってもいい人だったから」と返事をした。もっと高く売ることができたかもしれないのにと言っても、聞く耳を持たなかった。

業者Aは、人当たりはよかったが、実にしたたかな商売人だった。年寄りだったらうまく言いくるめて、安く買い叩けるだろうと踏んだのだ。
義母の言う「いい人」というワードは曲者だった。その後何度も、「いい人だから」という言葉に困らされることになった。