「知識」は自分を助けてくれる

不安の中でジタバタしていると、安心や安全というものは誰かから無条件に与えられるもの、授けられるものではないんだな、とも感じた。社会保険や国の高額医療費支給制度、家族や親しい人たちの精神的な支え、これらを得るためにも自分自身のリソース(健康やお金や時間)があってこそ。遅ればせながら恥ずかしながら、齢30にして「自立と自律」の大切さを痛感した。

知識を得ることはわたし自身を楽にしてくれ、知ることで自由になれた気がしたのは、尾崎豊の気づきからダブルスコアの30歳の夜だった。けれど、学ぶことに遅すぎるということはない。大半の大人はそう言う。以降、これからの人生、時間とお金のゆとりは「学び」に投資しようとわたしは決めた。

派遣社員を選んだ理由

留学から帰国したわたしは学んだ語学を活かせる職場を探し、派遣社員として外資系企業で働き始めた。同じ頃、書き下ろした乳がんの治療顛末記が書籍化されるという僥倖に踊り、学びを活かして働くことの充足感を感じていた。

海外出張にも行っていた派遣社員時代。ホテルのチェックイン中。写真提供/松さや香

活字にすると見事に華やかだけれど、実生活での悩みは大小さまざま浮かんでは消え、消えては浮かびを繰り返していた。不安は生きている証しとはいえ悩むことにもいい加減飽きが来たある日の午後、暇に任せてわたしはちょっとした計算をしてみた。

例えば、これまで自分を悲観し不満や不安に悩むことへ費やした生涯の時間は、わたしの今の時給(1,850円)で計算すると、果たしていくらになるのだろう……。妙な思いつきと元来強めの好奇心から、わたしはスマホで勘定した(仕事しろ)。その直後、計算したことを猛烈に後悔し、卒倒しかけた。わたし、億溶かしてる。

億!? 待て、待て待て。それだけの時間があれば、もっと英語上達したのでは? 先送りにしていたダイエットを達成できたのでは? 時間のかけ方次第で、自分自身の可能性をもっともっと広げてあげられたのでは⁉︎ 貧乏性のわたしにとって、この荒唐無稽な皮算用はむしろ効いた。たられば語ってる場合じゃねえ! その夜、わたしは客室乗務員のエントリーシートに記入した。