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イヌに聞いた「ここがヘンだよ、ヒトの顔」…顔で恋するなんて、はしたない!?

社会性獲得で進化したヒトの顔
私たちは毎日のように接しているため、すっかり見慣れてしまっていますが、ほかの動物たちにとっては、私たちの顔はずいぶん奇妙なものかもしれません。なぜ、毛がないの? なぜ、のっぺらしていて、目が細長いの? 鼻の穴が下向いていて、匂いがわかるの? イケメンとかって、顔に美醜を感じるの?

ヒトがこのような顔になったり、その顔から様々な印象を受けとるようになったのも、ちゃんと理由はあるのですが、どうもほかの動物からは、珍妙きわまりなく見えるようです。ここでは、なかなか手厳しいワンちゃんのご指摘をもとに、ヒトの顔の特徴について、その秘密を探ってみましょう。

奇妙な顔をした動物"ヒト"

私たちは見慣れてしまっているが、ほかの動物たちにとっては、私たちの顔はずいぶん奇妙なものかもしれない。例えば、イヌからしたら、ヒトの顔はこんなふうに感じられているのではないだろうか。

全体にのっぺりと平らで、毛がない。耳もとても小さく、毛が生えていない。

よく見ると、眼の上にだけ毛がある。顔の下部に毛があるのもいるが、ヒゲはない。

皮膚はあちこちが感情に応じて奇妙に動き、せわしない。

鼻が下を向いているのは、呼吸をするとき、いかにも息苦しそうだ。

そもそも眼が前を向き、横に切れ長で、白眼がむき出しになっているのは気持ちが悪い。

しかも、年がら年中、異性の顔を見るだけで色気を感じて興奮しているのは、じつにはしたない——。

【写真】ヒトって変な顔photo by gettyimages

なかなか手厳しい批評だが、ヒトの名誉のために、なぜ私たちはこんな顔なのか、イヌにもわかるように具体的に説明してみたいと思う。

長屋から高層マンション? 上に建て増されたヒトの顔

口の発達を中心に顔の発達を見た記事〈「なぜ顔は前を向いている?」生物進化を"口"の発達から考えてみた〉)では、口という器官の変遷を中心に、動物の進化と顔の変化の関係を見てみたが、位置もまた、ヒトとほかの動物とで大きく違っている。

一般の陸上脊椎動物について、体全体におけるレイアウトを見てみると、顔は胴体よりもずいぶん前にある。たとえばイヌの顔の部品は前から後ろに並んでいて、鼻(鼻鏡)と口がほぼ同じでいちばん前、続いて眼、額、耳と連なっている。頬(正しくは、偏が「夾」の正字を用いる)はあるが、ほとんど目立たない。

実は、顔の構造を建物に擬えたのは、前回の記事でもご紹介した香原志勢(こうはら ゆきなり)だが、私はこの配置を、1階はレストラン、2階に居室が3つ並んでいる「2階建て三軒長屋」と呼んでいる(耳も加えるなら四軒長屋になる)。2階部分の前端に当たる外鼻(鼻鏡)は、匂いを嗅ぐために口より伸び出して、ベランダになっている。その極端な例は、イノシシやバクやゾウである。

では、ヒトの顔の構造はどうなっているのだろうか。ヒトの顔は下から、口、鼻、眼、額が重なっている。香原志勢はこれを「4階建て」の建物にたとえた。もっとも鼻は、2階にあるだけでなく3階の眼の間にも続いていて、いわば「吹き抜け」になっている。

【図】顔の間取り一般の脊椎動物の顔は、1階レストラン(口腔)、2階に居室が3つ(鼻腔、眼窩、頭蓋腔)並ぶ2階建て三軒長屋だが、ヒトでは下から口、鼻、眼、額(頭蓋腔)が重なる4階建てで、鼻腔は2・3階の吹き抜けとなる。2階にあたる上顎洞は副鼻腔

これらの関係は、生身の顔を見ているだけではわかりにくいが、骨で見ると、口腔、鼻腔、眼窩、頭蓋腔という腔所が、4階建てに配置されているのが明瞭にわかる。

2階部分には、「上顎洞」という腔所(副鼻腔)があり、その上に3階の眼窩が位置している。2階の居室は、3階に続く鼻腔が正中に位置して、鼻腔の下半分と左右の上顎洞から構成されている。耳は構造としては小さく、2、3階の中間で左右に分かれて後方に位置し、1階から続く咽頭に密接している。咽頭とは、中耳から耳管でつながる。

人類の顔は進化の過程で起こった咀嚼器官の退縮と、脳の拡大によって、2階建て三軒長屋から4階建てに少しずつ変化してきたといえる。数百万年前の猿人はチンパンジーとほとんど変わらない2階建て三軒長屋に近かったが、百万年前の原人は4階建てに近くなっている。

では、顔全体の構造に続いて、表面の皮膚と毛について、イヌの疑問に答えていこう。

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