新社屋に使うハーフミラーのガラスを探すためロンドンのホテルに滞在する江副浩正(写真提供:江副碧)

リクルートが「8兆円企業」へと成長できたワケ 〜経団連な大企業たちとは「決定的な差」があった…!

瀧本哲史氏特別インタビュー

経営者としての江副浩正の天才性を早くから認めていた人がいる。

京都大学で教鞭を執る一方で、ベンチャーに挑む若者を育てるエンジェル投資家として活躍し、『僕は君たちに武器を配りたい』『ミライの授業』などの著書で知られる瀧本哲史氏だ。

2019年8月10日、瀧本氏は47歳の若さでこの世を去った。日本の未来を切り拓こうとした氏のメッセージは、伝説の講義録『2020年6月30日にまたここで会おう』という形で、幅広い世代に読み継がれている。

私は『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートを作った男』を書くため、2018年5月9日、瀧本氏にインタビューをした。江副氏とはいかなる人物だったのか。どのような点において「天才」なのか。

起業の天才!』の完成を機に、インタビューの全文をここに掲載する。

2012年6月30日、東京大学伊藤謝恩ホールで約300人の若者に向けて講義をする瀧本氏(写真提供:星海社)
 

「経営とはなにか」を自問し続けた

――経済の専門家でエンジェル投資家でもある瀧本さんから見て、江副浩正とはどんな経営者ですか。

瀧本氏 星新一のショートショートに『服を着たゾウ』という作品があります。江副浩正という人は、この物語に出てくるゾウにそっくりな人でした。

*筆者注 『服を着たゾウ』とはこんな物語である。
ある日、一人の男が動物園のゾウに催眠術をかける。
「お前はゾウではない。人間なのだ。人間の心を持ち、人間として考え、人間の言葉が話せる」
催眠術にかかったゾウは檻の鍵を開け街に出ます。洋服屋で背広を仕立て、芸能プロダクションへ行ってタレントになり、子供たちの人気者になります。やがて遊園地や、お菓子の会社、オモチャの会社の経営者としても大成功する。人に成功の秘訣を聞かれるとゾウはこう言います。
「わたしの心の奥に、おまえは人間だ、という声がひそんでいるのです。しかし、人間とはなにか、わたしにはよく分からなかった。そこで、本を読んで勉強をしたのです。人間とはどういうものか、人間ならなにをすべきか、などについてです。つねに学び、考え、その通りにやってきただけです。わたしが世の役に立っているとすれば、このためかもしれません。あなたがた、自分が人間であると考えたことがおありですか」(星新一『服を着たゾウ』より)

瀧本氏 大学を出てすぐに会社を興した江副さんは、ゾウが「人間とはなにか」が分からなかったのと同じで、「経営者とはなにか」がよくわからなかった。「自分は経営が分かっていない」という欠乏感の塊でした。経営者とはなにか、経営者なら何をすべきかをピーター・ドラッカーの本から懸命に学び、純粋にそれを実行したのです。

それゆえ、リクルートは「ファクトとロジック」「財務諸表と経営戦略」の会社になりました。人の情緒に訴える「カリスマ経営」の対極に位置する、日本では珍しいタイプの会社です。「世界の情報をすべて整理する」という社是を掲げた米グーグルも、ロジックの会社です。その意味で、リクルートとグーグルは同じタイプと言えるかもしれません。

「服を着たゾウ」が「人間とはなにか」を考えながら成長したように、江副さんも会社に危機が訪れるたびに「経営とはなにか」を自問して成長したのです。

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