菅義偉首相は、2月2日の記者会見で、初めて「プロンプター」を使った。反対側からは透明に見える板に原稿を投射する装置だ。「手元の原稿ばかり読んでいる」「国民に訴えかけることができない」と散々批判を浴びたためだろう。
世界の政治家や経営者の演説では「標準装備」だし、前任の安倍晋三首相も使っていた。なぜ今まで使わなかったのかが不思議なくらいだが、やはり目線を上げて話した菅首相の印象は大きく違った。
ところがそれも、冒頭発言まで。質疑応答だから、原稿がないので、当然だろうと思われるかもしれないが、逆のことが起きた。質問を答える時に、手元の資料を見て話すことが多かったのだ。不思議だ。質問の答えを書いた紙が手元にあるのか。
内閣記者会の所属記者に聞いてみた。もしかして、質疑はすべて用意されているのか。質問者として指名される記者は始めから決まっているのか。
記者によると、質問を事前検閲したり、質問者を限ったりされているわけではない、という。だが、内閣広報官が一生懸命各社の記者を訪ね、質問事項を聞き出しているという。内閣広報官は山田真貴子さんという女性で、旧郵政省に入り総務審議官で退官後、女性初の内閣広報官として登用された人物だ。
質問はまず記者クラブの幹事社が行うのが慣例だから、冒頭2人の記者の質問は事前に把握しているということだろう。首相が手元の資料を見て答えるのは、そこに模範解答が書いてあるからに違いない。
その後も指名するのも山田氏だから、だいたい質問は想定されているのだろう。まあ、ヤラセとは言わないが、想定問答通りの質疑になっているということだ。