子供が増えたことで生まれた「心境の変化」

多少のジレンマを抱えながらも、何とか時間の調整をつけて仕事と家庭を両立させ、それなりに満足のいく働き方ができていた中村さん。このまま子育てしながらずっと局アナを続けていきたい、という思いを新たにしていた中、2人目の子供を妊娠、出産します。

2人目が生まれた時。従妹と。 写真提供/中村仁美

「全く想像していなかったことなのですが、子供が2人になって、私の心を占める割合が仕事からかなり子供主体に変わっていったんです。子供が小さいうちは物理的なお世話がメインなんですけど、大きくなってくると心のケアにもっと時間を割きたい、寄り添いたいという気持ちが強くなって。習い事もさせてあげたいし、これもあれもやってあげたい、ということが増えていった。それが子供1人ならなんとかできても、2人となると私の能力ではとにかく時間がない。仕事は本当にありがたくやらせてもらっていたんですけど、子供の行事が重なると、仕事よりそちらを優先することのほうが増えていって……」

会社員である以上、収録や録音のあるなしに限らず、月曜から金曜の9時から5時までは、どんなに暇でも会社にいなければなりません。これはもう、そろそろ働き方を変えなければいけないのかもしれない……。そう思い始めていたところに打診されたのが、アナウンス室からの異動でした。

「異動先の営業企画部は、私が以前にお世話になっていた上司がいて、私にとってはラッキーとしか言いようがないような環境でした。それで最初は異動する気満々で、仕事内容や勤務体系について上司に話を聞きに行ったんです。ところがその内容が、むしろアナウンス室より全然ハードで。というのも営業企画部は数人のチームで動く仕事体系だったんですね。そこで私が『子供が熱を出した』などと休んだらどうなるんだろう、と不安になって。だから上司には、今の子供たちの状況や自分の母としての思いを正直に伝えました。

そうしたら上司は本当にいい方で、『休みたい日は全部出せ!俺がスケジュールを組み替えるから』と言ってくれたんです。ですが、とてもありがたかったのですが、一方で私だけそんな働き方をしたらチームのメンバーに迷惑をかけてしまう、と思いました。そのときに今までのモヤモヤが、私の中で明確に形になったんです。そこでようやく、ああ、これはもう辞めるタイミングだな、もうこれ以上できないな、と退社する決心がついたんです。

フジテレビ最後の日。 写真提供/中村仁美

アナウンサーが他部署に異動となり退社を決めた、と聞くと、不満を抱いたうえでの行動と受け取られるかもしれません。でも全くそんなことはなくて、むしろ良きタイミングのときに異動が手を差し伸べてくれた、というのが正直なところです。やはり頑張って手に入れたもの、居心地のいい場所を手放すのってすごく勇気がいるもの。頭では『辞めたほうが自分にとっていいんだろう』と分かってはいたんですが、何も起こらない状況でいきなりその決断はできなかったと思うんです。そういう意味では、『良いきっかけをいただいた』という思いしかありません」