# 酒場

客は獲物だった…売春街から一転「新宿ゴールデン街」が酒場街に変わるまで

ルポ・昭和の横丁探訪記【前編】

戦後以来の飲み屋街をたずね、飲み歩き、古老たちの昔話を聞き集めてきた文筆家・フリート横田氏。最新刊『横丁の戦後史』(中央公論新社)が話題ですが、令和の今も、昭和のたたずまいを残す「横丁」があると言います。その歴史をひもとき、現在の姿も見つめるエッセイ。

独特な「気配」が生まれた瞬間

あの子は19歳で家出してうちに来てね

ふふふと静かに、温かに笑う、丸眼鏡に口ひげの紳士、外波山文明(とばやまぶんめい)さん。今回私は、新宿ゴールデン街にある外波山さんの店「クラクラ」を訪れた。

「クラクラ」店内

外波山さんは長年にわたって営業者たちの組合(※1)の長をつとめてきた街の長老格である。1971年に「はみだし劇場」を立ち上げ、全国各地の街中で芝居をして回るなど、野外劇を中心に活躍してきた俳優・演劇人としての顔も持っている。映画・テレビへの出演も数多い。

※1 新宿ゴールデン街商業組合。2020年4月から新宿ゴールデン街商店街振興組合となった。
 

劇場という閉じた空間から飛び出して、テント芝居や野外劇など束縛されない場を求め続けた演劇人が、ことさらに狭いゴールデン街を長年愛し続けている。逆説的にも見えるが、なんとなく腑に落ちる。両者とも、空間的なものとは関係がない自由さがあるのだろう。

「あの子」とは、当時はまだあどけない少女だった、女優の秋吉久美子。73年ごろ、はみだし劇場の芝居に惹かれ、身を寄せていたのだ。ゴールデン街の人々には昔から演劇関係者が非常に多い。外波山さんは秋吉が訪ねてくるより前、60年代後半に新宿に落ち着いた。……とはいえ世情は落ち着かず、むしろ不穏さが漂っていた。

『新宿騒乱』があったでしょう。あの頃(ゴールデン街)に僕は来たの。ちょうどその時期からいろんな人も来るようになって

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