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音速よりも速い⁉ 空気中の酸素分子は時速1700kmで飛んでいる!

あっと驚く科学の数字
生命の活動を維持するために欠かすことのできない「酸素」。空気中にふわふわと浮かんでいる様子をイメージする方も多いかもしれませんが、じつはその分子は猛烈なスピードで飛び回っているというのです。酸素分子はいったいどれくらいの速度で飛んでいるのか? 酸素分子の動きを止めることはできるのか? 

森羅万象を科学の数字から読み解いた『あっと驚く科学の数字』から、この身近な疑問への答えを紹介いたします。

あらゆる方向に飛んでぶつかって

中学校の理科の授業でのこと。「動物は、呼吸によって空気中の酸素分子を体内に取り入れている」と教わった。自分の鼻や口を酸素分子が勢いよく通過するのを想像して、ちょっと変な気分がしたものだ。そもそも、「空気中に酸素の小さな粒がたくさん飛んでいる」というだけで信じられない思いだが、そんな酸素分子の世界に思いを馳せてみよう。

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空気中の酸素分子はどのようにしているのだろうか。おとなしいのだろうか、それとも騒がしいのだろうか。どんな物質でも、温度・圧力の条件によって固体、液体、気体へと形を変える。

この状態変化は、分子の運動が生み出している。固体を構成している分子は、分子間の引き合う力の影響で、大きく動くことができず、ぶるぶると振動している。液体になると、分子は互いに引き合いながらも、自由に位置関係を変えられるだけのエネルギーを持つようになる。

そして、気体になると、分子はもはや互いに拘束しあうことなく、自由に飛び回る。空気中の酸素分子も、飛び回っているのだ。つまり、酸素分子は騒がしいといっていいだろう。

では、それはいったいどのくらいのスピードなのだろうか。分子の運動速度は、上の式で求めることができる。酸素分子の分子量(M)は32であるから、私たちのいる環境を仮に1気圧27℃(300K)とすれば、その速度は秒速480メートルになる。

これは、時速1728キロメートルに相当する。新幹線の最高運転速度は時速320キロメートル、音速でさえ時速約1250キロメートルだ。つまり、酸素分子は新幹線や音よりもずっと速く飛び回っているのだ。

ただ、時速1728キロメートルといっても、まっすぐに飛んでいるわけではない。空気中にある他の分子や水蒸気、チリなどとぶつかりながら、右へ左へと向きを変えている。

ちなみに、1気圧の大気1立方センチメートルの中には、窒素・酸素・アルゴンなどの分子を合わせて、約3兆の1000万倍という数の分子が存在している。これほどぎっしり詰まっていると、まっすぐ進むことができる距離は、たかだか1ミリメートルの1万分の1である。そのため、分子の運動は向きも速さもバラバラで、エネルギーとしては利用できない。化学の世界では、このようなエネルギーを“質が低い”という。

とはいえ、こんな猛スピードで酸素分子にぶつかられたら痛いのではなかろうか。しかし実際には、分子がぶつかったと感じることなどない。それは、酸素分子が5.3×10のマイナス23乗グラムと非常に軽いからだ。風が吹いたり、猛スピードで移動して空気抵抗を感じたりしたときなど、分子が一定方向に動いたときにだけ、空気が実体のあるものだと感じられる。

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