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この世界は「空間3次元+時間1次元」ではなく、11次元なのかもしれない

素粒子物理学者の考える驚愕の世界像

この世界は11次元でできていると言われたら、みなさんはどう思われるでしょうか。人間が直感的に理解できる空間と時間を超えた「その他の次元」とはいったいどんなものなのか? そして、なぜ5次元でも6次元でもなく「11」次元なのでしょうか? 

森羅万象を科学の数字から読み解いた『あっと驚く科学の数字』から、素粒子物理学者が考える驚愕の世界像をご紹介します。

この世には、小さく丸まった7次元空間が存在する?

私たち人間は長らく、この世は空間3次元と時間1次元からなる時空4次元世界だと考えてきた。しかしながら、「いやいや空間10次元、時間1次元の11次元だ」という人たちがいる。もちろん物理学者、それも素粒子物理学者の一群だ。

その源になっているのは「超弦理論」。すべての物質や力の素は、量子力学的な長さの最小単位といわれるプランク長さ程度(10のマイナス35乗メートル)の弦(ひも)だという理論だ。今の標準理論では素粒子とされている、クォークや電子などの「物質をつくる粒子」も、電磁気力を伝える光子などの「力を伝える粒子」も、同一の弦の振動の表れで、その違いは振動パターンの違いにすぎない、と考えている。

超弦理論では、光子は横振動(横波)の表れとされるが、特殊相対論と矛盾しないためには、質量がゼロでなければならない。これを量子力学の支配する極微の世界で満足させるためには、空間9次元が必要なことが数学的に明らかになっている。さらに、5種類示されていた超弦理論を統一する過程で1次元増えて、空間10次元となった。

そして、私たちが認識できる4次元を除いた7次元(余剰次元)の空間はものすごく小さく、プランク長さ程度に丸まっているので、見ることも、感じることもできないというのである。

プランク長さとはどのくらいの大きさなのか。仮にプランク長さを1メートルとすると、原子や分子程度の大きさを示す1ナノメートル(100万分の1ミリメートル)が100億光年と宇宙規模の大きさになってしまう。それほど小さいのだ。

余剰次元のいくつかは、大きく広がっているかも

じつは前世紀の終わりに、欧米の3人の研究者が、余剰の7次元すべてがプランク長さに丸まっているのではなく、いくつかはもっと大きく広がっている可能性があることを指摘した(ADDモデル)。

素粒子物理学では、宇宙には重力、電磁気力、弱い力(核変換を起こす力)、強い力(核力の源)の4つの力があり、宇宙の始めにはすべての力は同じ1つの力だったとされている(力の統一)。

ところが、重力だけ桁違いに小さい。たとえば、2個の電子の間に働く重力は、その電子の間に働く電磁気力の10の43乗分の1に過ぎず、43桁も違う。電磁気力と弱い力を統一する理論はすでにできているし、強い力を入れた3つの力の統一も何とかうまくいくのではないかと思われている。

重力は本当に逆2乗則に従っているのか? Illustration by the-lightwriter/iStock

しかし、重力だけは、その小ささから、統一をはかる試みは暗礁に乗り上げており、先がまったく見えていない。ところが、余剰次元のいくつかが広がっているとすると、話は変わってくる。

2つの物体の間に働く重力は、その距離が10分の1になると、3次元空間では距離の2乗に反比例(逆2乗則)するので100倍になる。これが、余剰次元の内の1つが広がって4次元空間になっているとすると1000倍になる。さらに、もう1つが広がって5次元空間になっているとすると、10000倍になる。

数学的に考えると、n次元空間では重力は「n−1」乗に反比例するからだ。つまり、空間次元が増えれば、距離が短くなるにつれ、重力は桁違いに大きくなり、他の3つの力とあまり違いがなくなる可能性が高い。ADDモデルでは、余剰次元の2つがミリメートル程度まで広がっているとすると、重力の弱さを矛盾なく説明できるとしている。

このように、余剰次元のいくつかの広がりは、素粒子物理学の難題、「重力を含めた力の統一」を解決に導くものだ。ADDモデルではその広がりについて、大きい場合はミリメートル単位としているが、これに根拠はない。

同時に、超弦理論では、10のマイナス35乗メートルのプランク長さ程度に丸まっているとしていたが、これにも根拠がないことが明らかになっている。今のところ、余剰次元が広がっているのかどうか、広がっているとすればどのくらいなのか、についてはまったくわかっていない。しかし、ある程度広がっていれば、その存在を現在の観測・測定技術で見出すことができる。今、その試みが進行中だ。

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