ある朝突然のことだった

私が潰瘍性大腸炎と診断されたのは、39歳のときだった。あれからもう20年近く経つが、私はいまもこの病気と向き合い続けている。

それはある朝突然のことだった。トイレで自分が出血していることに気づき、「あれ……痔なのかな」と思った。この段階ではまだ痛みも苦しみもなにもない。ただ肛門から血が出ているだけだ。薬局で痔の薬を買って塗ってみたが、まったく治らない。肛門科のクリニックで「痔ではありません」と言われて大きな病院に移り、そこで初めて自分が難病にかかっていることを知った。

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安倍晋三前首相が退任した原因は、持病の「潰瘍性大腸炎」。この難病が本当にどのような病気なのかはよく知られていないのではないか。実は日本では1990年代から2000年代にかけて大幅に増加し、平成26年度には約17万人もの人が潰瘍性大腸炎の医療受給者証交付を申請している(厚生労働省衛生行政報告例の概況より)。難病と言われる病気も、コロナのような感染症も、いつ自分の身にふりかかるかわからない。病というのは他人事なのではなく、現実をうけとめてどのように生きていくかを考える必要があるものだ。

潰瘍性大腸炎であることを公表しているジャーナリストの佐々木俊尚さんが、自身の体験をふまえ、これがいったいどんな病気なのか、病気を抱えながら生きていくとはどういうことなのかを綴ってくれた。

なお、文中には薬についての記述も含まれるが、これは佐々木さん個人の経験についてのものであり、医師の診断のもとにその人に合う薬を用いることが必要であることを明記しておく。

潰瘍性大腸炎というのは本来は自分を守ってくれるはずの白血球が、過剰に活性化して腸の粘膜を攻撃してしまう病気である。そして大腸の粘膜に炎症ができて、下痢や腹痛、血便などの症状になる。発症する原因は不明で完治することもないから、国の指定難病になっている。

でもこのような即物的な説明だけでは、潰瘍性大腸炎のつらさはわからないだろう。幸いなことに私は重症化したことはないが、そのレベルの患者である私にとってこの病気のつらさは、「他人に理解してもらいにくい」「とにかく恥ずかしい」というふたつに尽きる。

痛みもないのにトイレで出血…難病との告知は晴天の霹靂だった Photo by iStock