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日本が「戦争の加害者」になっていることを本気で理解していますか?

「法の空白」を世界に知られたら…
じつは日本は法治国家の体をなしていなかった……! 「法の空白」をどう埋めていけるのか。今、どのような議論が必要なのか。東京外語大学教授の伊勢崎賢治氏と弁護士で伊藤塾塾長の伊藤真氏が徹底討論!(撮影:村田克己)

前編「日本人がまだまだ知らない…自衛隊『深刻すぎる大問題』の正体」はこちら

もし今、「虐殺」が起きたら?

伊勢崎:2020年4月に超党派のような形で「国際人道法違反を裁けない日本の法体系を考える集い」というシンポジウムを開催しました。与野党の対立を超えて心ある政治家の参加がありましたが、手応えは今一つ。実際、あの後はなにも動いていないのです。そこで、早急に考えたいのは、これから、この問題をどう展開していけばいいのかということです。

たとえば、1世紀ほど前に、「関東大震災朝鮮人虐殺事件」が起きました。実は関東大震災80周年のタイミングで日弁連は次のような会長談話を発表しています。

《1923年9月1日、関東地方を襲った大震災直後、多数の朝鮮人、中国人が虐殺された。
日弁連は、この被害にあった関係者からの申立を受け、この虐殺事件の真相と原因を究明してきた。
80年の時の経過は、事態の究明を極めて困難なものとした。しかし、他民族への大規模にして重大な人権侵害の事実を記録し、また真相の究明に当たってきた少なからぬ良心的な人々の努力の蓄積によって、朝鮮人、中国人の虐殺に関して、日本の軍隊が直接手を下して兵器を用いて殺害に及んだこと、国による虚偽の情報の伝達などに誘発されて、自警団が虐殺に及んだことが明らかになった。
関東大震災80周年を迎えるいま、国籍や民族が異なっても何人も安全平穏に生きる権利があるという当然の前提にたち、自然災害の発生など緊急の事態において、在日外国人に対して、重大な人権侵害がおこることのないよう、国が自衛隊、警察、入国管理局など権力行使にあたる官署の公務員に対して人種、民族差別の防止にむけた人権教育の推進など具体的な措置を行うよう要望する。
また、自警団による朝鮮人、中国人等の殺害に少なからぬ民間人が参加していることについて、日弁連としても、今回の調査の結果をいかし、市民が国籍や民族の異なる人々に対し、人権侵害を加えることのないよう、相互に共生する社会の実現にむけて具体的な努力を傾ける所存である。》

この事件では、実行犯こそ数名が形式的に起訴されましたが、命令した首謀者は捕まっていません。

伊勢崎賢治氏
 

ルワンダのように近年において、市民のグループが組織的に直接手を下す大量虐殺においては、集団行動に長ける軍や警察が裏でそれを指導するのが一般的な構図です。この事件では、当時の軍隊の関与が指摘されていますが、裁判にも当時の軍法会議にもかけられていない。

「関東大震災朝鮮人虐殺と同じことが、もし今起きたら?」――このシミュレーションの必要性は、この日弁連の談話とともに、広く日本社会に訴えたいと思います。

もし、日本が国家の責任として命令権者を起訴しなかったら、国際社会が絶対に黙っていません。韓国や常任理事国の中国が、安保理マターにし、日本に対する制裁措置を動議するでしょう。最低でも、日本も批准する国際刑事裁判所による起訴は免れない。大変な外交問題になるでしょう。

国際刑事裁判所ローマ規程を批准した各国が、その後どこまで国内法を整備しているかを追う便利なサイトがあります( https://cjad.nottingham.ac.uk/en/ )。日本が遅れているのは一目瞭然で、国際刑事裁判所に“協力”する法令しかありません。肝心の、日本でローマ規定の定義する重大な違反、戦争犯罪と人道に対する罪をおかした人間を、日本の司法が処罰する立法がなされていない。

伊藤:ちゃんと立法化しようと思ったら、日本の政治家も処罰の対象になることもある。責任を取らされてしまうから、作りたくないんじゃないでしょうか……。

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