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日本人がまだまだ知らない…自衛隊「深刻すぎる大問題」の正体

自衛隊は「軍事的過失」を犯さないのか
「日本は国際法から見たら非常にマズい状態」「万が一何かの引き金が引かれて国際社会が大量虐殺と認定する事犯が起こってからでは遅い」――日本は、自衛隊は、深刻な問題を抱えている。最悪の事態を想定していないのだ。このままではどうなるのだろうか。東京外語大学教授の伊勢崎賢治氏と弁護士で伊藤塾塾長の伊藤真氏が縦横に語り合った!(撮影:村田克己)
(左)伊勢崎賢治氏、(右)伊藤真氏

自衛隊が抱える「深刻な問題」

伊勢崎:僕はもう10年以上にわたって、防衛省の統合幕僚学校の高級課程というところで、陸海空の幹部候補生を教えています。ほとんどが自民党政権時の政策批判なので、保守の政治家から伊勢崎を下ろせという動きもあるようですが、それでも使い続けてくれているのは、本当に光栄に思っています。

そこで何を教えているのか。アメリカを中心とした対テロ戦に象徴されるように、現代の戦争は、古典的な国家対国家のものに加え、非正規な軍事組織、それも国境をまたぎ、やっかいなことに民衆と区別が付きにくい、こういうものを相手に交戦しなければならない。そういう交戦の現場で発生する諸問題を教えるのが僕の講義です。

諸問題の中で一番深刻なのは、国際法、つまり国際人道法の重大な違反行為。通称、戦争犯罪と呼ばれるものです。特に、それなりの正当な理由で現場に送られた多国籍軍や国連平和維持軍PKOが、やむをえない交戦の中で、もし戦争犯罪をおかしてしまったらどうするか。人道という名のもとにこれだけ軍事介入が増えている現在、これは国際社会の喫緊の課題です。

我が国の自衛隊は、実際にイラクやPKOをはじめそういう現場に送られてきた。当然、僕の講義では、この自衛隊と国際法の関係を触れないわけにはいかない。これは、自衛隊の法的地位の問題ですから、憲法問題にも直結します。

東ティモールやシエラレオネ、アフガニスタンなどで多国籍軍の文民統治や、そういう非正規な軍事組織を武装解除する任務を経験して日本に帰国した後、自衛隊が抱える問題に気づかせてくれたのは、イラク派兵差止訴訟などで活躍された川口創弁護士でした。

時の政権にかかわらず日本は国際法から見たら非常にマズい状態のままで自衛隊を派遣しているのですが、それはなぜか。政治家を含め多くの日本人は、「自衛隊は“軍”ではないのだから軍事的な過失は犯さない」と解釈しているからでしょう。

 

罪のない一般市民が犠牲となる事犯には2種類あります。一つは、戦争犯罪のように国際法の法治が介入するもの。もう一つは、内乱や動乱でその国の刑法や関連する国内法が法治するもの。

どんな国家でも、国内問題に国際法の介入を避けたいわけですが、第二次大戦後のめざましい国際人道法を中心とする国際法の発展は、その法治の介入領域を広げることにあるわけですね。

例えば、大量虐殺ジェノサイドの引き金となるヘイトクライムは、戦場ではなく、一国の日常の中で起こります。こういうものに対しても、今では国際法が法治しようとする。

国際法を批准し、その法治を受け入れる国家は、国内法の整備によってそれに応えなければならないのですが、日本は批准しながら、現行の刑法で十分であるという立場をとってきた。

しかし、実行犯を起訴の起点とする日本の法体系では、組織犯罪であるヘイトクライムの指揮命令系統を最も厳しく処罰することはできません。

僕は日本社会を信用していないので、万が一何かの引き金が引かれて国際社会が大量虐殺と認定する事犯が起こってからでは遅いし、そういうヘイトを煽る政治家に杭を打っておきたい。軽々しくヘイトを口にするおまえたちが最高刑でクサイ飯を食うんだぞ、と。

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