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菅政権が「大迷走」…コロナ罰則論議で見えた「これだけの問題点」

本当にこれでいいのか?

今回は、新型コロナウイルス対策の実効性を高めるという名の下で行われる法律改正について、考察したいと思います。専門的な内容も含まれますが、私たち一人ひとりにとって、極めて重要な憲法上の基本的人権の制約についての話ですので、ぜひご理解いただければと思います。

1月28日、新型コロナウイルス対策の実効性を高めるための政府提出法案の修正協議で、与野党は、感染症法改正案に盛り込んだ刑事罰を撤回することで合意しました。入院を拒否した感染者らへの懲役は削除し、「罰金」は行政罰の「過料」に切り替え、過料の額は、感染症・特措法改正案ともに減額するとのことです。

今回の罰則の導入について、大きな懸念を示していた立場の者として、修正されたことそれ自体は望ましいことだと思います。しかし、厚生労働省で、多くの法律案の改正に携わり、法案を作成し、内閣法制局と協議を重ね、関係団体や政治の場での事前調整、国会審議などを経験してきた立場からすると、今回の修正の経過には、大いに違和感・危惧を覚えます。

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理由は大別すると二つです。

(1)政府が慎重な検討の上、反対があることは当然想定した上で、政策として「どうしても必要であり、これがベスト」と考えて提案したはずの法律案の、しかも、肝となるはずの部分を、安易に撤回してしまうことの危うさ
(2)罰金を過料に切り替えたとしても、こうした罰則を導入することの問題点は、依然として残ったままであること

(1)について

今回、国会での議論の前に、与党がさっさと修正に応じたのはなぜでしょうか?

予想以上に、世論の反対が大きかったからでしょうか? それとも、国会で、強く抵抗することが予想された野党に花を持たせ、妥協を引き出すために、敢えて高めの球を投げた(=ハイボール。 まずは、相手が到底受け入れられない高い要求を出して、最終的に、自分もこれだけ妥協するからと、要求を下げたフリをして、相手に本来の水準の要求を認めさせる交渉術)ということでしょうか? どちらも、よろしいことではない、と思います。

今回の法案は、議員立法ではなく、極めて高度の緻密さ・厳格さが要求される閣法です。関係省庁が法案を作成し、内閣法制局の審査を受け、「政策を実現する手段として当該内容が適当か、憲法に適合しているか、他の法制度と調和が取れるか」等について、詳細かつ多角的に検討し、これが必要かつベストである、との判断の上に、政府が提案してきているもののはずです。

それにもかかわらず、容易に撤回してしまうのであれば、「そもそも、政府の判断なんて、いい加減なものなのだな。本当は絶対に必要というわけでもない負荷を、国民に押し付けようとしていたんだな」ということになり、政府の判断や、政府そのものに対する国民の信頼が、大きく損なわれることになります。

「真に必要なもの、国民のためになるもの」であるならば、たとえ、反対があったとしても、(適正なプロセスを経て)実現・実行するのが、国と国民を守り、その未来にしっかりと責任を持つ政府の姿、というものでしょう。本当は必要でないのにやろうとしたのであれば、過剰な権力の行使ですし、本当は必要なのに撤回するのであれば、国民を守るつもりのない無責任ということになります。

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