連載「出生前診断と母たち」も回を重ねてきたが、今回はこの連載を読んでいただいたことがきっかけで出会えたひとりの女性の妊娠物語を書かせていただきたい。
女性は30歳で第三子、第四子を双子で授かった天野沙耶さん(仮名)という。妊娠に気づいてすぐ受診した病院で「双子」と言われ、それだけでも驚いたのに、総合周産期母子医療センターへ転院するよう言われると、妊娠18週の健診で衝撃的な話があった。妊婦健診で全員が受ける超音波検査をおこなったところ、双子のうち、ひとりの子どもは腎臓が正常に形成されていなかった。

出産ジャーナリストの河合蘭さんによるFRaUweb連載「出生前診断と母たち」。出産の前には出生前診断により胎児の病気がわかったり、別のハプニングがあったりして、生命の危機や、子どもが障害を持つ可能性を告げられることがある。そんな時は、妊娠を継続するかどうか決断をしなければならないことも多い。大切なのは、親が自分たちで考え、そして自分たちで決断することなのだろう。今回お話を伺った方は双子を妊娠、そのひとりに異常が見つかった。どのようにして「決断」をしていったのだろうか。
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致死的な「ポッター症候群」

腎臓は、血中の老廃物や不要な水分、塩分を取り去って尿にするとても大切な臓器だ。通常は、そら豆のような形をしたものが左右にふたつある。しかし沙耶さんの赤ちゃんのひとりは、腎臓があるはずの位置にブドウの房のような小さなものがたくさん見えるだけだった。それには腎臓の機能はないという。

診断名は「両側多嚢胞性異形成腎」で、「ポッター症候群(シーケンス)」と呼ばれる一群のさまざまな症状を起こすと言われた。生まれてきても命が助からない珍しい病気で、治療法はないという。医師は、「ほとんどの方は産むことを断念する」という事実を告げた。

「そして、うちが示された選択肢はさらにきつくて……」
沙耶さんはそう言った。
「双子だから、人工死産をするならひとりということはできない、するなら2人とも……と言われたのです」
双子は、片方が胎内で亡くなった場合、もう片方の子はどうなるか。元気に生まれてくるかもしれないが、その子にもリスクが及ぶ可能性もあった。海外なら、こんな時ふたりのうちとりだけを中絶する減数手術が選択肢にあがるかもしれないが、日本では倫理的な議論が進んでおらず難しい。
そもそも沙耶さんは、ふたりとも産みたかった。

次の週の妊婦健診で超音波検査を再びおこなうと、双子の子どもたちは、しっかりと抱き合っていた。
 

3Dで見られる超音波検査 写真提供/天野沙耶

まるでお互いを必死に守っているような姿――。
「あれを見たら、もう、できない!と思いました……人工死産は」
家族は「今回はあきらめてはどうか」「上の子どものことも考えなくては」と言ったが、沙耶さんは、どうしても、お腹のふたりをあきらめることはできなかった。