旅作家の歩りえこさんが自身のエッセイ『ブラを捨て旅に出よう』に綴られていない世界一周中のエピソードを披露しているFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)。

今回は、アフリカ北西端に位置する「モロッコ」で出会った青年とのエピソードをお届けします。この青年、純真無垢だと思っていたら、実はクレイジーだったそうで、歩さんが困惑してしまう出来事が……一体何があったのでしょうか。

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初対面のモロッコ人がいきなり荷物を…

雄大なサハラ砂漠を有する北アフリカの「モロッコ」。大都市のカサブランカに着いた瞬間、あちらこちらのモスクから、イスラム圏特有のアザーン(お祈り)が聞こえてくる。エキゾチックという表現がぴったりの街だ。

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そんなカサブランカに到着後、列車で街の中心部へ向かおうと、駅のプラットホームで列車を待っていた。すると同じホームに立っていた、すらっと背の高い2人組の美形青年たちが目に飛び込んできた。「モロッコ人ってイケメン多いな……」と見とれているうちに、その一人と目が合ってしまった。

その瞳の美しさに思わず気恥ずかしくなって視線を逸らすと、男は私のほうに歩いてきて、足元に置いていた私のバックパックをひょいと持ち上げた。「女の子がこんな重い荷物を背負って歩くなんて大変だろう」

初対面のモロッコ人美形男性にいきなり荷物を持たれ、あっけにとられた私は、そのまま列車の中へと私の荷物を持ったまま乗り込む男の後ろを慌てて追いかけた。そのちょっと強引な態度になんだかドキドキしてしまう……。

「どこから来たの?僕はカサブランカに住んでいて、コイツは僕の弟。僕の名前はムスタファ(仮名)。君の名は?」これがモロッコ人男性「ムスタファ」との出会いだった。

カサブランカの中心地に着くまで、色々なことを話した。日本人で世界一周していること。いつもノープランで泊まる宿さえ決めていないこと。そんな話題を、ムスタファと弟は夢中になって聞いてくれた。

当時の私より3つ下でまだ21歳だと言うムスタファは、彫りの深い顔立ちと長い睫毛が特徴的でとても大人びていた。モロッコ人はヨーロッパとの境にある為、アラブと西洋の混血が進み……美形が多いと聞いたことがあるが、まさにその通りだ。

お互いの話をしているうちに、ムスタファ兄弟の家族宅で一緒にランチを食べようと誘われ、初対面なので少し不安もあったが……ヨチヨチ赤ちゃんからヨボヨボおばあちゃんまでいる大家族の写真を見せられて安心だと感じたので、彼らの家に向かうことになった。

ワルザザードは砂漠のオアシスとも呼ばれ、『グラディエーター』『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』『アラビアのロレンス』『007 リビング・デイライツ』などのハリウッド映画のロケ地にもなっている。写真提供/歩りえこ