「死か、さもなくば支配か」米中対話が絶望的に不可能な理由があった

地政学があぶり出す人間の本性
ペドロ・バーニョス プロフィール

他者を支配するのは人間不滅の野望

社会的意思を押しつけるための暴力行為としての戦争は、けっしてなくなることはないだろう。自分たちの考え方や生き方を他者に強制し、平和を好む人たちにさえ、降伏しないかぎり戦わせようとする人間集団は、いつの時代にも必ず存在する。

「どんな危険を避けられた人でも、その人が所属する集団の存在が許せないという者たちからの攻撃をかわすことはできない」と述べたのは、古代ギリシアの政治家デモステネスだ。

悲観的な思想の持ち主であったカントは「戦争自体には特別な動機など必要ない。人間の特性にもともと植え付けられているからだ」と述べ、「人間の自然な状態は平和ではなく戦争である」と断言した。これは目新しい考えではなく、カントよりはるか昔に、ギリシアの哲学者プラトンが「都市間の戦争が継続し、永遠になくならないのは自然の法則だ」と述べている。「戦争の残酷さは、人間より猛獣にふさわしい」といったのはロッテルダムのエラスムスだ。

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暴力のスパイラルを生み出す戦争は、人の奥底に潜む本能を引き出し、非人間的な面をむき出しにする。戦争は人間のもっともネガティブな側面を表面化させ、誇張する。ひとたび引き起こされれば、理性や動機づけ、法にかなっているかどうかといった考えはむしろ邪魔になる。その瞬間から、「ただ勝たなければならない」という強迫観念だけが存在するからだ。勝つためにはどんな手段もいとわなくなる。それがたとえ信じられないような手段であっても。

ウラジーミル・プーチンは、第二次世界大戦におけるソ連の勝利から62回目の記念日にあたる2007年5月9日の演説で以下のように述べた。

「あらゆる戦争の原因は何より、誤りと平時に行われた予測の失敗にあり、それらの原因は対立と過激主義のイデオロギーに深く根づいている。今日、それを忘れずにいることはとても重要である。なぜなら戦争の脅威は減少しているわけではなく、その表層が変容しているにすぎないからである。ナチス・ドイツの支配下で起こったことと同じように、新しい脅威にも、人命の軽視や他国を押しのけて優位に立ちたいという野望が見られる」

プーチンはここでイスラム過激主義の脅威、さらには米国を念頭に置いていたのかもしれないが、いずれの場合も明白なのは、プーチンが、他者を支配したいという、人間にとって永久不滅の野望について述べている点である。

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