「昭和元禄落語心中」とリンクする現在 

いやこんなご時世だからこそ
絶対に落語を残しといてやらなきゃならねぇぞ 
寄席には客が
不入り続きだ 
噺家になる奴がいねぇのも判る 
明日のおまんまも手に入らねぇのに
皆生きるのに必死でよ
でもよぉ
腹いっぱいになりゃまた皆
寄席に戻ってきてくれる
俺ァ絶対そう信じてるよ

(「昭和元禄落語心中」2巻より) 

(c)雲田はるこ/講談社『昭和元禄落語心中』2巻より

マンガ『昭和元禄落語心中』は、八雲と助六、三代にわたる落語とともにある人生を描きつつ、兄弟弟子、師弟、女性落語家、新作と落語の多面性も盛り込み、落語の複雑な魅力を余すところなく描いてくれた。美しい絵で、美男美女が多く登場し、落語界を少し美化していると言えなくもないけれど、そこはむしろ歓迎する。暗く憂いのある表情がこんなにも色っぽい噺家さん実際にいたっけ?と落語好きなら思いつつも、つい今の落語家にモデルを求めてしまう。芸の厳しさ、難しさ、老いと芸について、伝承の点についても描かれている。 ものすごく大変なことをサラリとやってのけている漫画だと思う。 

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今までの落語や落語家が出てくる漫画は、落語(噺)そのものを描く時は、落語世界の登場人物が新たに現れ、噺を進行させることが多かったが、『昭和元禄落語心中』は違う。落語家が高座を務める姿しか見せていない。そしてそれが名人芸であることを読者にわからせる。画力、技量……よほど、穴のあくまで落語と落語家を観察してきたことは想像に難くない。漫画に噺の間が見える。作中で噺を知ったあとは、生で聴いてみたくなる。その「聴いてみたくなる」を実現させるのがどうやら今回の落語協会とのコラボのようだ。 

この原稿を書くことになり、再読した『昭和元禄落語心中』には、初読の当時とは違う感触を持ったところが多々あった。時代、状況の変化により、受け取り手の印象がここまで変わることに驚いた。落語は美しくてかっこよくて面白い、そしてはかない。だからいい。改めて思った。 緊急事態宣言が出ている今、休んでいる寄席もあり、寄席や落語会も20時で終演にするなど、いろんな制限がかかっている。華やいだ気持ちで落語会に行くのも難しいかもしれない。中止や延期に継ぐ延期の落語会も珍しくない。落語界全体が少し、疲弊してきている。そんな時に開かれる「昭和元禄落語心中寄席」。落語の魅力を描ききった漫画からの、嬉しい援護射撃だ。 

「こんないいもんが、、なくなる訳ねえべ!!!!!」 

この台詞は、描かれた当時よりもはるかに、よりいっそう私の胸をうつ。

鬼籍にはいられた歌丸師匠はじめ、落語を伝え続けた多くの師匠たちが今もいる 写真提供/佐藤友美