眞子さまのご結婚問題、日本の男が知らない「不幸になる権利とモテの罠」

鈴木涼美さんに気になることぜんぶ聞いた
旺季 志ずか, 鈴木 涼美 プロフィール

100万円の対価

「旺季さんは、どんなタイプのダメンズとつきあってたんですか?」

私が若いころ、ダメンズホイホイと異名をとるほど男を見る目がなかったといったら、鈴木さんはこう私に訊ねた。借金があったり、浮気癖があったり、暴力的だったりした過去のダメンズとの恋愛体験。きわめつきは、妻子がいるのを隠していた男性と付き合い始め、しばらくしてそのことに気が付いた私は、25歳のおバカな若さ特有の傲慢さで、その男の奥さんに「旦那さんを譲ってください」と直談判。で、1週間の彼のスケジュールを、彼女と山分けした過去を告白する。若気の至りというか、黒歴史というのか、自分の中の「夜叉」と向き合う体験だったのだが、鈴木さんの前では、素直に話してしまうのが不思議だ。次は私が質問した。

(撮影/黒石あみ 小学館)

――ご著書にお書きになっていたことなんですけど、AVは泣きながらやったみたいな一文があったので、辛いこともあったと思うのですが?

鈴木 やっているときは好きでやっているわけだから、辛いと感じることはあまりありません。あ、痛いことはたまにあるんですけど。鞭で打たれたり。ゴキブリを泡で固める殺虫剤、あるじゃないですか。それって火をつけるとふわっと燃えるんです。それを背中につけて燃えるって演出しようとしたら、泡をつけすぎて火が消えなくて背中が燃えちゃったことがあって、超痛かった。

多くの夜職女性において、複雑なのは辞めた後ですね。

「AV女優」は辞められますけど、「元AV女優」というのは辞められないんです。
それは「元テレビ局社員」とか「元新聞記者」も辞められないんだけど、「元AV女優」という肩書きは、人生にこびりつく、というか非常に重くて、いまだに何をしてもそう書かれるし、「文春砲」に、あの日経記者はAV出身って書かれてからは、その肩書を書かないと「隠してる、AV女優のくせに」って言われる。

100円のパンツを1万円で売ることも、2日間撮影して100万円もらうことも、単純な労働の対価でもなく、その時の性の値段というわけですらなくて、「元AV女優」として生涯、生きていくことへの対価なんだとつくづく思います。AV女優をやりたいと相談に来る子は、後悔するかも、とか、歳をとったときに恥じることになるとか、みんな多少のリスクは考えているんです。でも考えている10倍とか20倍くらいの重みはありますよ、という話をします。

——私、お母さんが生きてらっしゃったらお会いしたいなと思うぐらい魅力的だったんです。お母さんが、どんなに最低の間違いのことをしていたときも、今のあなたを愛してるって言い続けたっていうのがすごいなと思って(亡くなった母親は、児童文学の研究者。父親は、エーリッヒ・フロムの『愛するということ』を翻訳した学者さん)。

鈴木 幼稚園の先生や保母さんを志す人に、子供と本の関係を教えていた母親にとって、私はある意味、唯一の生きるサンプルでした。あまり何かを強制された記憶はなく、本をいっぱい読むことと、語学ができるようになることと、友だちをつくりなさいっていう、この三つだけを教えられて育ちました。で、世界じゅうの一流の絵本を大量に与えていたら、娘自身はビニ本の表紙になる人生を歩んで、ちょっとうちのお母さん的にはすごい商売の邪魔っていうか(笑)、私の理論は全部うそじゃんみたいな。良い読書体験が子どもの人生を豊かにすると説いていたら、良い読書体験だけを教えたはずの自分の子どもをAV女優にしてしまったっていうことについて考えをまとめて本にしたいと言っていたけど、それは叶わず他界しました。

 

***

インタビューを終えて、社会はやっぱりいまだに男性を中心に回っているのだと、痛感。

そんな器量の小さいニッポンの、穴という穴にハマって、その業を背負ってなお、自分もこの社会も突き放して俯瞰的に語る言葉を、鈴木さんはもっていた。

歳を重ねる中で、日本のモテ市場における自身の「価値」の変化をも冷静に判定しながらも、他人によって「小さな皿」に勝手に自身を振り分けられそうになるたびに「NO」を表明する彼女の姿はなんと逞しいのだろう。

壁にがんがんぶつかり血を流しながらも、世間の皿が大きくなるまで、私だってしぶとく生きてやろうじゃないか。

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