――新型コロナウィルス第3波の到来で、高齢者施設でも感染者の発生が相次いでいます。最近の介護現場はどうなっているのですか。
長岡 昨年来、介護現場では新型コロナ対策に追われています。市中感染の拡大で職員が感染のきっかけになることもあるため、日頃の手洗いや消毒、換気などの徹底はもちろんのこと、プライベートでも外食や遠出を控えるなど相当に神経を遣っています。
また、施設では家族の面会を制限していますが、長らく親や連れ合いと会えないために不安が募り、体調をくずされる例もあると聞いています。
一方、自宅で介護を受けている高齢者も感染リスクを避けるため、通いのデイサービスや施設のショートステイ(短期入所)の利用を控える人が増えています。そのため介護事業者の収入は減少し、経営が厳しくなっています。
先ごろ東京商工リサーチが、2020年の老人福祉・介護事業の倒産(負債1000万円以上)が118件に上るとともに、休廃業・解散が455件に急増していることを明らかにしましたが、いずれも過去最多を更新しました。
とりわけ厳しいのは、訪問介護事業です。業種別の倒産件数では半数近くを占め、もっとも多い。もともと担い手であるヘルパーが不足しており、その有効求人倍率は15.03倍(2019年度、厚生労働省調べ)と、介護サービスのなかでも極めて厳しい求人難の状況が続いています。
これまでもヘルパーを確保できずに撤退を余儀なくされる事業者が増えていましたが、そこに新型コロナが追い打ちをかけた格好です。
このままでは、さらに状況が悪化する懸念もあります。いわゆる“人手不足倒産”は、これからも続くかもしれません。
――2008年のリーマンショック時には、失業者が介護業界に転職した例が相次いだと聞きましたが、今回はそうした動きはないのでしょうか。
長岡 確かに、リーマンショックをきっかけに介護職の確保が進んだ面はありましたが、今回のコロナ禍では状況が異なるようです。「失業者からの応募を期待したが、求人を出しても反応がない」とこぼす介護事業者は少なくないのです。