旧姓使用は海外では違法とみなされる場合も

その後、無事第一子を出産した菊地さん。子供の出生証明書を発行してもらいにオーストラリアの役所を訪れたとき、またも問題が起きた。それは、菊地さんのオーストラリアの運転免許証(旧姓)とパスポート(夫姓)に2つの異なる姓名が記載されていることが原因だった。「なぜ公的な身分証明書にダブルネームが使用されているのか」と思い切り怪しまれてしまったのだ。

写真はイメージです〔PHOTO〕iStock
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そこで菊地さんは日本の特殊な事情を説明したが、夫婦同姓の義務や旧姓の通称使用の概念のないオーストラリア人には、理解の範疇を越えていたようだ。もとよりオーストラリアには戸籍制度がなく、結婚後、法的な改姓手続きをしなければ夫婦は基本的に別姓だ。婚姻証明書があれば、配偶者の姓を名乗る、あるいは、配偶者と自分の姓の両方を使うこともできる上に(手続きは無料)、自分や配偶者以外の全く新しい姓を作るのも可能なのである(約200豪ドル ※2)。要するに、2つの姓名を名乗る必要がオーストラリア人にはないのだ。

結局、役所の人は「菊地さんは結婚したばかりで、運転免許証の名前変更手続きをまだしていないのだろう」と誤解し、「今回だけは見逃すけれど、運転免許証や大学の身分証明書の名前を即行、変更しなさい」「ダブルネームは認められていないから、公式書類では名前を統一しなければいけない」と注意を受けたという。

日本ではマイナンバーやパスポートに旧姓と戸籍姓(配偶者の姓)の併記が認められているが、このような2つの名前を使い分けるという仕組みは、日本以外の国では理解されない。だからこそ、夫とともに国際的に活躍し、場合によってはそれぞれが違う国で働く可能性もある菊地さん夫婦にとって、この日本のシステムは「非常に不安」なのだそうだ。