2021年という新しい年を迎え、SDGs達成を目指す2030年まで10年を切った。ここ数年、SNSやweb、テレビをはじめ、さまざまなメディアで取り上げられることが急激に増えたSDGs。さらに昨年は、新型コロナウイルスによりこれまでの常識が一変、本質を見つめ直すきっかけとなり、SDGsへの関心が高まった人も少なくないはずだ。

クリエイティブディレクター・ライフスタイリスト大田由香梨さんは、そんな時代の転換期を迎えるよりももっと前から、社会課題に向け活動をし続けてきた人のひとりだ。長きにわたりファッション業界に身を置きながら、飲食、空間づくりなど活動の幅を広げ、衣食住すべての観点から「美しい地球の持続」を目指し、さまざまな取組みを行っている。

自然と共存した暮らしにプラゴミがあふれるワケ

大量破棄、産業水汚染、大量生産による劣悪な労働環境など、さまざまな課題を抱えるファッション業界。今や「エシカルファッション」という言葉もすっかり浸透しつつあるけれど、大田さんがファッションの世界に足を踏み入れた2000年頃は、生産背景まで気にする人はほとんどおらず、ネームバリューのあるブランドやトレンド性が重視されていた時代。

柔らかいオーラとやさしい口調、いきいきとした大きな瞳が印象的な大田さん

「父の故郷である沖縄の海はすごく美しいのに、私が暮らす神奈川の海はそうじゃない。なんでなんだろう?」幼い頃から、目にうつる自然に対し漠然とした疑問を抱えていたという大田さんは、華々しいファッションの世界で多忙な生活を送りながらも、関心ごとの矛先はすでに「地球」を向いていた。

「昔から、洋服やバッグ、靴に触れながら、いつも『これはどうやって作られたのだろう?』と、考えていました。私はデニムが大好きなのですが、岡山、徳島、広島から中国やLAまで国内外のデニム工場を訪れては、ファッションの生産者にお会いして話を聞かせてもらったり。生産背景を知るために単身でケニアに行ったこともありましたね。当時から旅の目的はリゾートバケーションというより“人”でした」

最近のもっとも印象深い旅として、2018年に単身で訪れたバングラデシュでのエピソードを聞かせてもらった。深刻化するバングラデシュのゴミ問題を自分の目で確かめるために、首都ダッカから車で数時間走らせたところにあるカパシアという村のある家族の家にホームステイさせてもらったときのことだ。

一週間ほど滞在したバングラディッシュで訪問した村のみなさんと。この村では、グラミン銀行などのマイクロファイナンスのシステムを活用し、女性たちが生き生きと働いていた Photo by sleepingtokyo

「カパシアは、とても美しく、天国みたいな村でした。朝5時になると村人みんなで礼拝し、朝食を食べて子どもたちは学校へ。あぜ道では、通りすがりの人たちがもぎたての果物を手渡してくれ、一緒においしくいただいて……食べ終わったら、果物の芯は地面にぽいっ! そう、バングラデシュにはゴミ箱がないんです。カレーを食べたら肉の骨は床にぽいっ! すると待ち構えていた猫がくわえてどこかへ持っていき、飲み物に虫が入ったら、窓から外にジャーッと捨てて注ぎ直したり(笑)。

けれどそれらはやがて土に還り、また種になり芽を出す。では、これがプラスチック製品ならどうなるか? 土に還らず、海や川へ流れ込みますよね。バングラデシュでの“循環する暮らし”を目の当たりにして思ったのは、ゴミをゴミ箱に捨てるという概念を持たない国に、プラスチック製品を輸出した側の責任だということ。もちろん受け入れる側も、ゴミ処理システムを整えたり、住民にゴミの教育を行うことが先ですよね。なぜなら、彼らはただ自然と共存して生きているだけですから」