「何をいつまでやろうと私の勝手だ!」

義母は、あまり遠出をしない人だった。買い物も日中に済ませて、夕方以降は家でごろ寝したりテレビを見たり。訪ねてくる友人もいなかった。長電話するのは、自分の姉や妹くらいのもので、とにかく人間関係が希薄だった。

ある日、義母の妹から突然電話があった。妹は義母の家から車で20分ほどのところに住んでいる。トミちゃんに電話をかけたんだけど、留守だったの。時間をおいてかけても出ない。日が暮れても出てこない。心配だからこれから家に行ってみる、と言うのだった。夫もすぐさま電話をかけたが、たしかに応答しない。「部屋で倒れているんだろうか、これから行ったほうがいいかな」と出かける仕度を始める。

年を重ねた女性の一人暮らしでずっと連絡が取れないと、何かあったのではないかと心配になってしまう Photo by iStock

しばらくすると、さっき連絡してきた義叔母がまた電話をかけてきた。「今、トミちゃんの家の前なんだけど、帰ってきたよ。それがね、聞いてよ……」義叔母は憤懣やるかたないといった調子で話し始めた。

夫を亡くしたばかりの老人だし、一人きりの家で何かあったらたいへんだと駆け付けた叔母。そこへ、義母がふらっと帰ってきた。買い物に出たら友だちにばったり会って、そのまま家に上がって話し込んでいたらしい。義叔母はホッとしたが、思わず「こんなに遅くまで……心配して様子を見に来たんだよ!」とちょっと強い口調になった。すると、顔色を変えた義母は「あんたにそんなふうに言われる筋合いはない! 何をいつまでやろうと私の勝手だ!」と怒鳴り散らして家に入っていったという。義叔母を家に上げることもなく。

「そりゃあ言い方はきつかったかもしれないけれど、こっちは心配して見に来たのに、あんな態度はないよ」と義叔母はため息をついた。

すぐさま夫が電話をかけた。みんな心配していたこと、年寄りの一人暮らしになったのだから気をつけるようにと伝えると、義叔母が言われたのと同じ言葉が返ってきたらしい。
義母は自分の行動に意見されたり、規制されたりするのが一番嫌いだった。このときは、別に何を制限されたわけでもないが、相手の言葉の強さだけに反応し、思いやりを感じ取ることはできなかったのだろう。

家族や友人なら、相手を思うあまり感情的な物言いになることがあるものだが、義母はそういう人情の機微を理解しなかった。実は近所づきあいでも同様のことでトラブルを起こし、孤立していたことが、後になって判明したのだった。

【次回は2月9日(火)公開予定です】