意味不明の買い物が…

四十九日が済んで、久々に実家を訪れると、キッチンに真新しい巨大な冷蔵庫が入っていた。
「これ、20万くらいしたんだよ。なんでもいっぱい入るって、店の人に勧められたんだよね」
これから一人暮らしになる人が、こんなに大きな冷蔵庫を買うのかと驚いたが、車を運転できない義母はしょっちゅう買い物に行けるわけではない。むしろ効率的かもしれないと思いなおす。

お茶を飲みながらふと義母の左手を見ると、人差し指と中指に奇妙な形の指輪が嵌っている。私たちが尋ねる前に、義母は嬉しそうに手をかざして見せた。
「これは、Tちゃん(義母の姉妹)が教えてくれた指輪なんだよ。はめていると、体の調子が良くなるって」
夫が値段を聞くと、7〜8万くらいだと言う。ふたつも買ったのかと夫が呆れると
「Tちゃんと旦那は5本の指全部の分買ったんだよ。指によってはひとつ20万くらいしたね。私は安いのふたつしか買えなかった」

身体の調子がよくなる指輪がひとつ7~8万円…(写真はイメージです。この指輪は実際に上松さんの義母が買った指輪ではありません)Photo by iStock

怪しい。ひとつでも買っちゃダメなやつではないか。調べると、どうも科学的根拠の希薄なものらしい。これまで、自分の自由になるお金は自分の年金しかなかった。そこに夫の遺族年金が加わり保険金も入ったので、舞い上がっているのだろう。指輪については身内にルートがつながっているから、まだまだ売りつけられる恐れがあった。これはしばらく様子をみる必要がある。

とりあえず電話で、かくかくしかじかでと説明し「Tおばさんとおじさんに誘われても、もう買わないように」と伝えた。義母は一瞬絶句したが、少し不満そうな声で「知らなかったからさー。もう買わないよ」と答えた。この「知らなかったからさー」というフレーズは、このあと何かにつけ聞くことになる、義母の必殺きまり文句だった。

ただの無駄遣いならまあ仕方がない。けれども、何かの拍子にこちらが連帯保証人にでもされた日には目も当てられないではないか。その後はときどき電話で様子を聞くことにした。