死者をこき下ろす義母の発言

思い出に浸る余裕もなく葬儀の段取りに入り、棺に入れるものなどを選んだ。義父は服装や持ち物にこだわる人だった。ジャケットやシャツなどの色合わせも趣味が良かった。タンスの中から、よく組み合わせていた茶系のツイードジャケットとごく淡いミントグリーンのワイシャツを出し、棺に入れることにした。私と夫が服を選んでまとめているとき、義母がそれらのセットを一瞥して言った。

「お父さんはこんな色のもの着て、本当に趣味が悪かったこと!」

私たちは反論する気にもならず、黙々と物を揃えていった。一息ついて座卓を囲んでいたとき、義母が唐突にこんなことをつぶやいた。

「お父さんは亡くなるとき『よくやってくれた。ありがとう』って言ったんだよ」

開いた口が塞がらなかった。義父はひと月ほど意識がなかった。しかも、臨終には息子だけが立ち会ったのである。「苦労させて悪かった」とか「ありがとう」なんて、ドラマで見るようなセリフを言えるような状態ではなかった。どこをどう解釈すれば最後の言葉をそのように捏造できるのかと怒りが湧きかけた。しかし待てよ、何十年もの間、義母は不本意な結婚生活を営んでいた。夫である義父も同様だったはずだが、夫に感謝されることが義母の唯一の願望だったのかもしれない。願望がもたらした妄想であるなら、そのままにしてやるか。

義母は葬儀の打ち合わせだけで疲れてしまい、通夜の日も告別式の日も、早起きして動くことができなかった。当日になって私に連絡があり、着物の件はキャンセルしてほしいと頼んできた。自分で頼んだのだから自分でキャンセルしなさいよ、とは言えず、仕方なく葬儀社に電話をかけた。

義父は男尊女卑のようで話せばわかる人だった。なぜ義母がそんなにひどい態度をとるのかがつかみきれず、呆然としていた Photo by iStock