2015年11月、僕は阪神と2年契約で合意し、再びタテ縞のユニフォームに袖を通すことになった。阪神では、FA制度によってメジャーリーグに挑戦した選手が復帰した例は、かつてなかった。
仮に、僕が自由契約選手として渡米していたら、日本のプロ野球界への復帰に際しては、以前に所属していた球団、つまり阪神の了承が必要になる。僕が他球団への入団を希望しても、阪神が認めてくれなければ実現しない。復帰できるとすれば、事実上、阪神以外に選択肢はなかった。
しかし、海外FA権を行使して渡米した場合、そうした手続きの必要はない。オファーさえあれば、どの球団と契約しようが、選手の自由だった。実際、僕はいただいた複数のオファーのなかから、阪神を選んだ。僕は、阪神に拾ってもらって復帰したわけではなかった。
そうした意味でも、僕に出戻りという意識はなかった。僕は、前だけを見て1本の道を走り続けたにすぎない。
その過程で、かつて通過した道を通った。そういう認識に近い。同じ道を再び通ることになったのは、そこを通らなければ、僕がめざしている終着点にたどり着けないからだ。
道に迷ってUターンしたわけでもなければ、バックで戻ってきたわけでもなかった。
3年前に通り過ぎたとき、僕はもう二度とこの道を走ることはないだろうと思っていた。
しかし、不思議な縁に導かれるようにして戻ってみると、なぜか少し新鮮な印象だった。
まわりの景色は懐かしく、僕の心はやすらいだ。沿道にはたくさんの人たちがいて、僕を待っていてくれた。それは、僕の大好きな道だった。