正しくないものを絶対許さない人々と国家…これは「日本の近未来」なのか

桐野夏生さんインタビュー
石戸 諭 プロフィール

インターネット社会の「深刻な問題」

ブンリンという組織をつくった国家システムの全体像は打ち出されない。ここで恐怖はさらに増していく。

《作家仲間や読者のなかにも裏切り者が出てくるし、一人称ですから、マッツが言っていることもどこまで本当かわからないわけです。信じていたのに、誰が裏切り者かわからないという状況のほうが怖いと私は思っています。

やっぱり、インターネット社会で得体のしれない人たちから根拠のない批判や、表現について問題があると言われることが増えましたよね。作品の登場人物の考えをあたかも作家がそう考えている、と読まれてしまうこともあります。

私もある海外メディアから取材を受けたときに、登場人物の描写を私個人の考えであるという前提で質問が飛んできて驚愕しました。私は妻が夫を殺害してバラバラにする小説(『OUT』講談社文庫)を書いていますが、だからといって殺人を肯定しているわけでは、もちろんありません。

文脈を外して、作品のこの一文は問題だ、この考え方は問題だという批判をされても困るのです。どこから矢が飛んでくるかわからないし、防ぎようも反論のしようもない。

データ化された本の一節を抜き出して、これは民族差別だ、これは女性差別だと言われることだってありえますよね。

 

表現に規制をかけてくる国家は確かに恐怖ですが、しかし、国家ばかりが怖いのではない。ネットから出てくる悪意、誰かを貶めようという悪意に対する恐怖については、きちんと描かないといけないと思っています。

邪気のない言葉と、悪意のフェイクニュースが入り混ざっている今のインターネットは、かなり問題が多いんじゃないですか。》

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