大会得点王がまさかの…
PK戦は時の運。
周りは理解していても、当事者ならばなかなかそう簡単に片づけられるものではない。
先の全国高校サッカー選手権ファイナル。山梨学院(山梨)と優勝候補大本命である青森山田(青森)の一戦は2-2でPK戦にもつれ込んだ。
青森山田の2人目、この日ゴールを決めていた3年生の安斎颯馬が放ったキックは中学時代にFC東京U-15深川でチームメイトだったGKに防がれ、呆然とする姿が映像に映し出された。

4人目も失敗して優勝を逃がすと彼は泣き崩れてしまう。仲間から励まされるように次々と声を掛けられていたものの、申し訳ないという気持ちが強くなったのか、涙は一層強まっていった。
安斎は5得点を挙げて大会得点王に輝いている。
だが得点王の記憶などではなくPKを失敗して準優勝に終わった悔しい記憶として残っていくのだろう。
PKを失敗して勝利を得られなかった責任を感じて涙する、仲間が励ましていく――。
古今東西、フットボールの世界ではよく目にする光景ではある。そのシーンに巡りあうと、筆者はいつも“あのとき”を思い起こす。
11年前、衝撃的だったPK失敗
2010年6月29日、南アフリカワールドカップ決勝トーナメント1回戦、日本代表とパラグアイの一戦。延長でもスコアが動かず、PK戦に突入した。
創設して100年以上の歴史を誇るプレトリアのロフタス・バースフェルドスタジアムに緊張感が張り詰める。筆者も一般の観客席のなかに用意された記者席から息を凝らして見つめていた。
先攻のパラグアイ、後攻の日本とも2人目まで成功。3人目もパラグアイが決め、次に登場したのが右サイドバックの駒野友一であった。