気鋭の教育行政官が描く、「教育を変える」ための設計図

新刊『教育は変えられる』推薦エッセイ
苫野 一徳 プロフィール

当事者みんなで学校をつくる。
行政はそれを徹底支援する。

最後に、教育行財政、端的には教育委員会をどうするか。

このテーマについては、さすが、山口氏の面目躍如と言うべきアイデアが次々と出されています。

ついつい「現状維持」や「前例主義」に陥ってしまいがちな教育委員会が、どうすれば「未来に向けた挑戦」に向かい続けられるか。

まずは、いわゆる「縦割り」行政の問題をどうするかについて、明確なアイデアが示されます。3〜5年で異動になる職員。隣の部署でさえ、何をやっているか理解しづらい組織。これでは現状維持や前例主義に陥るのも仕方ありません。

杉並では、「誰の、何のための学びを、どのように支えるのか」を、すべてのスタッフが考え続ける日常をシステム的に生み出しています。

教育委員会だけでなく、各学校の校長や教員もまた、これを考え続けられるような仕組みを整えつつあります。

そんな教育委員会の姿勢は、次の一文によく表れています。

「自分たちの学校や地域に必要なことを、当事者であるみなさんが本気で考え抜いてくれたら、教育委員会は、共に考えることを含め、その実現を全力で支えていく」。

教育委員の選任方法についてのアイデア(まだ実現されてはいませんが)も、わたしには目から鱗なものでした。本書の一つの白眉かと思いますので、その具体はぜひ本書をお読みいただければと思います。

 

読み返すたびに発見がある

本書の1つのキーワードは「共治」です。「自治」と言うより、「共治」。

いま、わたしたちの多くは、教育は「あてがわれるもの」という意識を持っているのではないかと思います。

でも、教育は、子どもも含め、本来は当事者みんなで作り合っていくべきものです。

本書のタイトルは『教育は変えられる』ですが、その本質は、「教育を、みんなで作り合えるものへと変えていこう、そしてこうすれば変えていけるのだ」と提言するところにある。わたしはそう思います。

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子どもたち、教師、保護者、教員志望の学生、地域の人たち……。だれもが、それぞれの立場で、教育を「作り合う」ためにできることがあります。

それはいったい、どうやって? そのヒントが、本書には詰まっています。

良書というのは、読み手の問題関心の深まりや変化に応じて、読むたびに新しい発見があるような本だと思います。

テーマが多岐にわたることもあり、本書は間違いなくそのような本です。

ぜひお手元に置いて、折に触れて読み返されることをお勧めしたいと思います。

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