褒める? 叱る? 問題行動は直すべき? 発達障害の子に必須の対応

間違えると、深刻な二次障害の可能性も
松永 正訓 プロフィール

その時、親が意識すべき6つのこと

ADHDの正式な評価のためには、時間をかけて丁寧に問診を繰り返す必要があります。それにさっきからマユちゃんは、ずっと椅子に腰掛けて私とお母さんの会話を聞いています。ADHDの子どもは、まるで「エンジンで動かされている」ように、動き回っていますので、ちょっとADHDの可能性は低そうです。

私はお母さんに次のことを説明しました。

  • 怒っても問題は解決しません
  • 教えて育てること(教育)こそが唯一の解決策です
  • マユちゃんに、大人から叱責されるような失敗を経験させてはいけません
  • そのためにはあらかじめ教えておくこと(予習)が大事。成功体験を積ませます
  • 園や自宅で何かがうまくできたらたくさん褒めます
  • 褒めて自尊感情を育てます

私の話を聞いてお母さんは納得してくれました。つい、マユちゃんのことを叱ってしまうとのことでした。その結果、マユちゃんは自分に自信が持てず、落ち着かない態度をとっていたのかもしれません。私はお母さんに今後もマユちゃんの発達を一緒に診させてくださいとお願いしました。

病名にこだわらない、事実を受容する

さて、発達障害の可能性のあるお子さんがクリニックを訪れたとき、私はいつも心に決めていることがあります。それは次の2つのことです。

  診察時のポイント1 

「自閉スペクトラム症」とか「ADHD」の病名を付けることにこだわらない

発達が苦手な子には療育(発達を促し、自立して生活できるよう援助する取り組み)という有効な支援方法がありますので、子どもの自立を促していくことが重要です。そして年長さんの段階で自治体の就学相談を受けて、可能ならば特別支援級ではなく通常学級に行けることを一つのゴールにします。

入学前までに社会性を身につければ、病名はある意味でどうでもいいのです。結果が大事といえるかもしれません。

  診察時のポイント2 

発達障害の特性が強い場合、親にその事実を受容してもらう

これは1と矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、発達障害の子どもの中には、明らかな知的障害の子や、身辺の自立ができず通常学級に通うことが難しい子がいます。

障害の受容というのは親にとってとても困難なことです。しかし親が発達障害を認めようとしないと、子どもには大きなストレスがかかり、二次障害を引き起こすことがあります。

二次障害が起きると、専門家でも治すのは困難

二次障害には以下のようなものがあります。

気をつけたい! 二次障害のおもな症状

  • 身体症状・・・不眠・腹痛・頭痛など
  • 心の症状・・・不安障害・強迫性障害・うつなど
  • 問題行動・・・不登校・引きこもり・家庭内暴力・自殺など

こうなってしまうと、たとえ専門家でも治すことが困難になります。障害を受容するということは、ある意味であきらめることです。

しかしそのあきらめは、最初は投げやりな気持ちだったとしても、必ず前向きな気持ちに変わっていきます。「この子でもいい」から「この子がいい」に変化していくのです。この変化が本当の意味での、ポジティブなあきらめです。

投げやりな思いもやがて、"ポジティブなあきらめ"に変わっていくはず photo by gettyimages

ABAとTEACCH――大切な2つの療育方法

私は、開業医にできることは何だろうかと、いつも自問自答しています。

学校の選び方や、きょうだい児にどう接するかを相談されることもあります。療育手帳(知的障害があることを証明する障害者手帳。福祉サービスや経済的なサポートがある)の取り方や福祉の利用の仕方を教えることもあります。そして今述べたように、わが子の障害を受容できない保護者に、その子なりのすぐれた点を説明して、受け入れられるように一緒に悩みながら会話を進めることもあります。

そして一番多い相談は、やはり療育の方法に関してです。発達障害児に対する療育にはいろいろなものがありますが、代表的な2つを取り上げると、それは「ABA(エービーエー/応用行動分析)」と「TEACCH(ティーチ/自閉症やそれに関連するコミュニケーションにハンディがある子どもたちへの治療と教育)」です。

両者は一見、対照的に見えます。この2つの療育法のエッセンスを説明してみましょう。

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