最新の脳研究が明かす「頭がいい人、悪い人」は何が違うのか

鍵を握るのは「ある脳細胞」の働き
毛内 拡 プロフィール

天才・アインシュタインの脳で発見された「一般人の脳との違い」

これはすでに有名な話ですが、物理学者・アインシュタインの死後、天才の脳の秘密を解き明かそうと秘密裏に彼の脳の一部が科学的に解析されました。

その結果、大脳皮質のある一部分で、一般の健常な人ではニューロンの数がグリア細胞の2倍存在するのに対して、アインシュタインでは、ニューロンとグリア細胞の数は同じだったということが報告されました。つまり、アインシュタインの脳では、一般の人よりもグリア細胞の数が多い部分が存在するというのです。

このアインシュタインの脳の研究報告は、たった1人のサンプルであるため、科学的な根拠として採用することは難しいですが、ひょっとするとグリア細胞に頭の良さを生む秘密が隠されているのかもしれません。

【図】アインシュタインの脳の研究アインシュタインの脳にはグリア細胞が多い? 大脳皮質のある部分においてニューロンとグリア細胞の数を比較すると、左脳・右脳共にアインシュタインの脳は一般の人よりグリア細胞の比率が高かった〈Diamond et al., Experimental Neurology(1985)をもとに作製〉

グリア細胞は頭の良さに必要不可欠

最初に、ニューロンのネットワークがシナプスを介して情報伝達をしているとお話ししましたが、じつはこの情報伝達効率は一定ではなく、状況に応じてしなやかに変化することが知られています。この現象は「シナプス可塑性」と呼ばれていて、脳とコンピュータが大きく異なる点でもあります。

詳しくは『脳を司る「脳」』でご紹介しているのですが、現在では、グリア細胞が、このシナプス伝達の効率を変化させるシナプス可塑性を支援することで、脳の情報処理にも関与していると考えられています。

これまで頭が良いということは、主にニューロンのはたらきに注目されてきましたが、効率的に脳をはたらかせるしくみの舞台裏では、グリア細胞のような「ニューロン以外の要素」の活躍が必要不可欠だったのです。いま、このグリア細胞のはたらきが注目され、さまざまな研究成果が導かれているのです。

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