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最新の脳研究が明かす「頭がいい人、悪い人」は何が違うのか

鍵を握るのは「ある脳細胞」の働き

頭の良さは、脳のどの部分のどのような働きで決まるのか――長年、脳研究者たちが取り組んできたこの問題が、少しずつ明らかになってきています。その鍵を握っているのは、これまで知られてきた脳の神経細胞、ニューロン以外の脳の働きにあるそうです。

ご好評いただいている新刊『脳を司る「脳」』の中から、「頭の良さ」の最新科学についてご紹介しましょう。

頭が良いとはどういうことか

みなさんの身の周りにいる"頭が良い人"を思い浮かべてみましょう。あるいは、みなさん自身が、頭が良いと言われているかもしれません。一言で「頭が良い」と言っても、計算が速いとか、記憶力が良いとか、しゃべるのが上手いとか、絵を書くのが上手い、など色々な能力が挙げられます。

頭が良いことを表現するときに、「頭の回転が速い」とか「すごいメモリを積んでる」などと言うように、コンピュータにたとえられることがしばしばあります。頭の良さとコンピュータの性能が類比される理由として、単に計算速度が速いなどというだけでなく、膨大なメモリを効率的に引き出すことができるという能力にあるのではないかと思います。

色々な見解があると思いますが、このような頭の良さに共通しているのは、"速く"て"精密"で"効率が良い"というようにまとめることができるのではないでしょうか。

脳科学者や神経生物学者は、頭が良いとはどういう脳のはたらきなのか、どうして人類は他の動物と比較して頭が良いのかという問題に長年取り組んできました。脳の中で、速くて精密な情報処理をおこなっているのはニューロンと呼ばれる脳細胞ですから、頭が良いというのは、ニューロンが司っていると考えられてきました。

しかしながら、最新の研究では、「ニューロン以外の脳」の要素が、頭の良さに関わっているかもしれないという証拠がいくつも挙がってきています。
頭の良さを生み出す脳の意外なはたらきについて考えてみましょう。

頭が良い人ほど脳の配線がシンプル!?

およそ1300 gのわたしたちの脳の中には、数千億個という途方もない数のニューロンがあります。しかもニューロンは、さらに非常に複雑に枝分かれした突起を複数持っており、その一つ一つが他のニューロンと接続して回路を形成しています。

ニューロンが他のニューロンと接続する部分はシナプスと呼ばれており、1つのニューロンには、数千個ものシナプスが存在していると言われています。ニューロンは電気的な活動で信号を送りますが、シナプスで化学物質に置き換えて情報のバトンを渡しているのです。このような情報伝達のことを「シナプス伝達」と呼びます。

みなさんが、脳がフル回転している状態をイメージするとき、脳の中のネットワーク上を電気パルスがビュンビュンと飛び交って、さかんにシナプス伝達をしている様子を思い浮かべるのではないでしょうか。

【CG】電気パルスがビュンビュンと飛び交うシナプス伝達脳がフル回転している状態は、脳の中のネットワーク上を電気パルスがビュンビュンと飛び交う様子をイメージしがち illustration by gettyimages

頭が良い人は、さぞかし脳の中のネットワークが発達しており、ぎっしりと脳が"詰まっている"のだろうと思いますよね。

ところが、2018年にドイツの研究者らが報告した最近の研究結果では、いわゆるIQが高い人ほど脳の体積が大きいにもかかわらず、脳の配線がシンプルになっている可能性が示唆されました。つまり、頭が良い人ほど脳に無駄な接続が少なく、より効率的に脳をはたらかせているという解釈が成り立ちます。

頭が良い人ほどニューロンの密度が低い。IQテストの成績が悪い人(上)と成績が良い人(下)を比較。下のほうがニューロンの密度が低く、樹状突起の枝分かれも少ない〈Genç et al.,Nature Communications volume 9(2018)を改変〉

「人間は脳の10%しか使っていない」は誤解

脳の体積が大きいにもかかわらず、その中身がシンプルだとしたら、いったい何が体積を増やしているのでしょうか。その正体は未だ明らかにはなっていませんが、ヒントは「ニューロン以外の脳」の要素にあると予想されます。

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