テレワークは、「妖精さん」「社内ニート」を退治する特効薬となる

コロナ後の未来年表(6)
河合 雅司 プロフィール

無駄遣いしている余裕はない

テレワークが〈妖精さん〉や〈社内失業者〉などを浮き彫りにすることは悪いことではない。

そもそも、少子高齢化で働き手世代が減って行く時代に、1割近くもの「仕事をしない会社員」がいることのほうが異常である。人材の無駄遣いとしか言いようがない。

こうした存在を放置すると、組織全体の士気を下げる。年功序列や終身雇用といった日本企業の労働慣行に守られ、「働き」の割に高い給与をもらっていることが、若手社員の意欲を削ぐ結果となっている。

「仕事をしない会社員」の解消は長年の経営課題であったが、ここにきてようやく動きが出てきた。デジタル改革が進み始めて「仕事をしない会社員」はもとより、期待されるだけの成果を上げられなくなった人を対象とした早期希望退職の動きが本格化してきたのだ。

テレワークの普及がこうした動きを後押しするならば、むしろ歓迎すべきだ。人口減少社会を克服するには、雇用の流動化は避けられないからである。

働き手世代は激減期に入っており、コロナ禍を脱すれば再び日本は人手不足に襲われ、働く意欲のある人が総動員に近い形で働かなければ社会が回っていかなくなる。

テレワークをきっかけとして〈妖精さん〉や〈社内失業者〉が自己変革に目覚め、自らスキルアップを図って〈戦力〉に戻るならばそれに越したことはない。早期希望退職で「新たな活躍の場」を見つけたならば、わずかながらも人手不足につながる。彼らにとっても新たな道が開けるかも知れない。

固定給を大幅に減らす一方で成果給を手厚くしたり、副業を認めたりする新たな人事コースを企業側で設け、彼らの意識改革を促すというのも1つの方法となる。

いずれにせよ、現在の⽇本にとって、働く能⼒があるはずの⼈々を、〈妖精さん〉や〈社内失業者〉などのように無駄遣いしている余裕はないのである。

日本企業が生き残るために

自己変革に目覚めて〈戦力〉に戻ろうが、早期希望退職で社外へと去ろうが、テレワークをきっかけとして「仕事をしない会社員」の人数が減ることは、企業に大きな利益をもたらす。

そもそも、〈妖精さん〉や〈社内失業者〉がいなくても、ほとんど仕事に支障はないのである。この人たちが稼ぐ側に回れば、その分だけ単純に利益が大きくなり、「就業者1人当たりの労働生産性」(就業者1人当たり付加価値)は向上する

一方、彼らが退社したならば、会社全体の労働生産性の分母が小さくなるということなので、計算上、1人当たりの労働生産性は大きくなる。もっと分かりやすく言い換えるならば、給与を受け取る人数が少なくなる分、平均賃金が上昇する。

1人当たりの労働生産性が向上する(photo by iStock)

日本の労働生産性の低さはかねてより指摘されてきた。日本生産性本部によれば、2019年の1人当たりの労働生産性は8万1183ドル(824万円)でOECD加盟37カ国中26位である。これは米国の13万6051ドル(1381万円)の6割程度に過ぎず、同じ金額を稼ぐのに米国が1人で済むところを、日本は1.7人ほど必要とするということだ。

人口減少に伴い新規人材の採用が難しくなり、マーケットが縮小していくことが避けられない以上、日本企業が生き残るためには、1人当たりの労働生産性を向上させて、米国をはじめとする諸外国との差を縮め、競争力をつけていくしかないのである。

そうした意味では、既存社員個々の能力の底上げを図り、「仕事をしない会社員」を働く人へと転じさせるきっかけとなり得るテレワークは、人口減少対策としても大きな期待がかかる。

テレワークを活かすことが出来ず、単に感染防止策といったレベルに終わってしまうのか、生産性向上の大きな果実を得られるところまで発展させられるのか。各企業の取り組み次第で、日本の未来は大きく違ってくる。

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