なぜ「夫婦別姓」が自民党で議論され始めたのか?

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稲田朋美氏の「前兆」

前兆もあった。以前は選択的夫婦別姓に反対していた稲田朋美衆院議員が、昨年秋の法務委員会でこの問題について前向きに取り上げたのだ。

稲田氏は「婚前氏(旧姓)継承制度」と表現する。稲田氏は「実際に困っている人たちがいる。イデオロギー論争から脱却してそういう人たちを助けたい」という。

保守派のイメージの強い稲田氏だが、最近では女性や弱者に寄り添う姿が目立つ。たとえば『寡婦(夫)控除』という制度がある。夫(妻)と死別や離別した一人親が税控除を受けられる制度だが、未婚の一人親は対象外だった。

稲田氏は2019年末にシングルマザーたちの要望を受けて動き、未婚の一人親にも適用されるようにした。今回の動きもそういった流れに沿ったものだろう。

 

時代の変化に合わせた制度を

選択的夫婦別姓に賛成している議員の話を聞いた。

越智隆雄衆院議員。当選4回、56歳。東京都世田谷区が地盤だ。

「この問題に関心を強くしたのは、ある女性有権者からの相談がきっかけでした。『私は事実婚をして別姓にしているが、選択的夫婦別姓が認められたら法律婚をしたい』というのです。

周囲に選択的夫婦別姓のことを聞いたところ反対だという人はいない。困っている人たちがいて、そういう人たちが生きやすくするのが政治の役割だと思っています。家族が大事なのは当たり前ですし、それは普遍的価値で言うまでもないことです。

一方で時代が変わり、少子化が進み、人生100年時代といわれ、夫婦や家族のあり方も仕事の仕方も多様になってきた。そのなかで、現行の制度はいわば『同姓強制制』。それを『別姓選択制』に変え、選択肢を増やすという話です」

今年こそ動きがあるか

越智氏は、自民党の男女共同参画計画を議論した会合に出席後、「選択的夫婦別姓に賛成」とツイッターに投稿した。すると「いいね」が3000、反対コメントが1500あったという。「でも、実名での反論はいませんでした。これをどう考えるか、ということだとも思います」

自民党内には通称使用の拡大を主張する声もある。「私は金融やマイナンバーの普及に取り組んでいるんですが、本名と通称というふうに名前が複数あると、本人確認という概念とあわなくなるし、社会設計としてどうかなと思うんですよね。もちろん、別姓が認められて、社会が壊れるんじゃないかという不安には慎重に応えるべきだとは思います」

しかし、反対派の団体はさまざまな手を使って議員に手を回す。自民党の会合に誰が出席し、どんな意見を言ったかを議員を通じてチェックしている。

ある賛成派の議員は、自民党での会合のすぐ後に地元の地方議員から「夫婦別姓に賛成の意見を言ったそうですね」と言われたという。 

今年は必ず総選挙がある。また、夫婦別姓を認めないのは憲法違反だと訴えた訴訟の判決も、再び最高裁の大法廷である予定だ。

賛成派の意見も、選択的夫婦別姓の制度のあり方をめぐっては一枚岩ではないため(稲田氏のアイデアも私案の段階だ)、本格的な議論は総選挙と最高裁判決後になるとみられる。

だが、いずれにしても今年は選択的夫婦別姓をめぐって久々に動く年になるかもしれない

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