「家族がばらばらになる」
「戸籍が崩壊する」
「子どもがかわいそう」
昨年12月の自民党本部での光景だ。
…まるでタイムマシンに乗って平成の世の中に戻ったようだった。
ああ、あのときもこういう感じだったよなあ。セピア色の光景がよみがえる。
なぜ今回、夫婦別姓が議論されたかといえば、男女共同参画基本計画が5年ぶりに改定になり、そこに夫婦別姓についての記述が盛り込まれようとしたからだ。
そもそも夫婦別姓の議論は1996年に遡る。法制審議会が、夫婦別氏(法律的には別姓は別氏となる)制度の導入を盛り込んだ民法の一部改正案を答申した。だが自民党内に反対論が強く、法案の国会提出は出来なかった。
次に法改正への機運が盛り上がったのは2002年だ。自民党の野田聖子氏を中心として、例外的夫婦別姓制度の議員立法への動きが起きた。
野田氏は何とか反対派をなだめようと「例外的」という概念を持ちだした。
職業上の事情などで必要がある場合だけ家庭裁判所の許可を得て例外的に夫婦別姓を認めるというものだった。だがこのときも結局断念。
以降、自民党内での夫婦別姓の議論は止まった。民主党などが法案を準備したことはあったが、国会で審議されることはなかった。
司法の動きはあった。2015年には最高裁で夫婦別姓の合憲性が争われ、夫婦別姓は合憲と判断された。しかしこのとき、3人の女性判事が全員違憲と判断した。
その判決では「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」と、いわば国会に「宿題」が出された。だがその後まったく議論はなされなかった。
なぜかといえば、神社本庁など宗教系をはじめとする自民党の支持団体が夫婦別姓に強く反対していたからだ。
彼らは民主党に政権交代した時も自民党をずっと支えてきた心強い味方。そのせいもあるだろう。自民党は2010年の参院選公約では、夫婦別姓反対を打ち出した。
そして政権奪還後も、安倍首相が夫婦別姓に反対ということもあって議論は起こらなかった。2019年の参院選に向けての党首討論で安倍首相は党首のなかでただ一人夫婦別姓に賛成しなかった。
だから2015年に前回、第4次の男女共同参画計画の改定が行われた時も、もちろん自民党で了承を得るプロセスはあったものの、夫婦別姓問題はまったく議論が行われなかった。スルーされたのだ。
ところが、昨年の光景はまったく違っていた。