近年、「なりすまし神父」が毎年のようにヨーロッパ各地で出没しているという。ヨーロッパではキリスト教信者が年々減少していると聞くが、偽神父が頻繁に出現するのはなぜなのだろうか。この不思議な現象を、実話をもとに映画化した作品『聖なる犯罪者』が1月15日より公開中だ。

殺人犯が村で「神父様」と慕われるように…

第2級殺人罪で少年院に服役中の20歳の青年ダニエル(バルトシュ・ビィエレニア)。暴力に満ちた少年院で、ダニエルの唯一の救いはカトリックのミサだった。そんなダニエルは神父になるという夢を抱くが、犯罪歴がそれを阻む。

仮出所し、遠く離れた田舎の村にある製材所で働くはずだったダニエルは、ふと立ち寄った見知らぬ小さな村の教会で不審な人物だと怪しまれ、とっさに自分は司祭だと嘘をついてしまう。彼はその村の司祭代理となり、自己流のミサや風変わりな説教を行うように。村人たちはそんんなダニエルを「神父様」と呼び、慕うのだった。やがてダニエルは、ある悲惨な交通事故が村人たちに大きなトラウマを残していることを知り、なんとか彼らの傷を癒そうとするのだが……というのが、映画のあらすじだ。

『聖なる犯罪者』より

『パラサイト』とともに2020年のアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた本作は、9年ほど前にポーランドで3ヶ月間神父のふりをしていた当時19歳のパトリックという青年の事件をモチーフにしている。ダニエルの人物像、神父になりすました動機や村に流れ着いた経緯は、実在の人物であるパトリックに基づいているそうだ。

しかも、パトリックは実はひとつの村だけではなく、様々な村で神父になりすまして逮捕され、起訴されていた。だが、騙された村人たちが「彼はよい人なので許してやってください」と裁判で証言し、彼は無罪放免になったという。

その事件の記事がプロデューサーの目に止まり、記事を書いたマテウシュ・パツェヴィチさんが脚本を担当し、映画化に至ったという経緯もまた面白い。今回、パツェヴィチさんに取材することができたので、ヨーロッパで「なりすまし神父」が後をたたない背景について聞いてみた。

マテウシュ・パツェヴィチさん〔PHOTO〕Mateusz Nasternak