霧箱の実験装置の概要図と撮影された写真(1912年のウィルソンの論文より)

雲を作る装置だった「霧箱」…物理学を変えたウィルソンの画期的発明

サイエンス365days

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物理学を大きく発展させた「霧箱」の発明

1869年の今日(2月14日)、実験器具の「霧箱」を考案したことで知られる物理学者のチャールズ・ウィルソン(Charles Thomson Rees Wilson、1869-1959)が誕生しました。

スコットランドの主都・エジンバラの郊外に生まれたウィルソンは、名門ケンブリッジ大学で物理学と化学を学び、卒業後は中学校の教師などの職を経てキャヴェンディッシュ研究所に所属しました。気象学者でもあった彼は人工的に雲を作り出す研究を行い、その過程で荷電粒子の飛跡を可視化する実験器具の「霧箱(cloud chamber)」を発明しました。

霧箱(cloud chamber)とは文字通り、もともと霧(雲)を発生させるために作られた装置でした。自然界での霧の発生は空気中の塵やほこりが凝結核となり、それに水蒸気がくっついて起こります。しかしウィルソンは霧箱の実験を通じて、塵やほこりが取り除かれても、蒸気が多量に含まれる状態(過飽和)になった空気中では霧が発生することを発見しました。

このような空気中ではイオン(電気的な性質を持った原子や分子)が凝結核として作用し、そのイオンは放射線などの電離作用によって生まれます。つまり、霧箱はただ霧を発生させるための装置ではなく、放射線を視覚的にとらえることができる装置として利用できるのです。

1911年、ウィルソンは霧箱にラジウムを取りつけた針を吊り下げ、ラジウムから放たれるアルファ線の飛跡を写真にとらえることに成功しました。また、霧箱はX線の波長に関するコンプトン効果の証明や陽電子の発見など、原子物理学を発展させる大きな発見に役立ちました。霧箱発明の功績により、ウィルソンは1927年にノーベル賞を受賞しました。

霧箱で撮影した放射線の飛跡(1912年のウイルソンの論文より)

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