マンガ/伊藤理佐 文/FRaU編集部

緊急事態宣言で再び注目の「料理」

*痛い話が苦手な方は十分ご注意ください。

「ガチガチに冷凍されていたお肉を切ろうとして力を入れたら、肉が固くて手がすべり、人差し指を思い切り切ってしまった」(20代女性)

「キャベツの千切りができる大型スライサーでキャベツを切ってるとき、最後のほうで指背のほうをざっくりと切ってしまった。肉も切ってしまったようで血が止まらなかったが、病院へは行かず何とかなおし、スライサーは危ないので捨てた」(50代女性)

「脂分の多い魚を調理した後、良く洗わずに違うものを調理しようとしスイッチを入れた途端、脂が燃え出しあわてて消そうとしやけどをしてしまった」(40代女性)

これは、東京都生活文化局消費生活部で2009年にとったアンケート「キッチンでのヒヤリ・ハッと体験調査」に大量に集められた実例から3つ抜き出したものだ。インターネットで20歳~89歳の男女4000人を対象に行われ、まとめたものなのだという。それこそキッチンと一口でいっても、「台所まわり」「コンロまわり」「流しまわり」「調理家電関係」「調理器具・食品」「その他」とジャンル別に分かれている。ご紹介したのは「コンロまわり」と「調理器具」からのものだ。

たしかにキッチンには「凶器」になりうるものがいっぱい Photo by iStock

家電の能力アップによって、火が燃え上がりにくいガスコンロや、安全ストッパー付きスライサーなども登場してはいるものの、料理はどうしても怪我をしやすいもの。特にコロナで自宅での料理をする人が増えている今、病院に行かなくていいように気をつけなければならないだろう。

そんな「キッチンの痛い話」を、このアンケートとは別に正月にしぼって書いているのが、伊藤理佐さんの『おいピータン!!』17巻1話の「聞かないほうが」である。

お正月のなます、ささがきゴボウ、餅…

伊藤理佐さんのマンガ『おいピータン!!』は、20年以上続いているオムニバスショート漫画だ。手塚治虫漫画賞短編賞など多くの賞を受賞している名作で、現在は主人公のある事情につき『おいおいピータン!!』と名前を変えて「Kiss」で連載が続いている。描かれているのは、「食」を中心のテーマとしながら、日ごろ我々がモヤモヤしていることや、ドキッとするような事柄ばかり。あまりに人生のあるあるが見事に描かれているので、20年の蓄積の中から厳選し、「おいピータン!!人間学」という連載で無料試し読みの形でご紹介させていただいている次第である。

そして、そこに出てくるのが「正月の痛い話」、つまりお正月限定の「キッチンでのヒヤリ、ハッと体験」なのだ。

「あけましておめでとうございます!」
「おいピータン!!」シリーズの主人公である大森さんの後輩が颯爽と出社すると、大森さんが、左手に包帯を巻いている。

「手、どうしたんですか」
「ん? 正月にちょっと」

気になる後輩君は周囲に聞く。「正月にちょっとって、何?」
「あーーーー、俺も聞いちゃったよーー」

(c)伊藤理佐/講談社『おいピータン!!』

そして教えてもらったのは、大森さんの怪我のことではなく、別の社員の怪我の話だった。怪我をした本人が「聞かないほうがいいよ?」と言いながら教えてくれたのは、なますをつくるためにスライサーで人参を千切りにしていて「やりすぎた」ときの「悲劇」だった。ぎゃー!(大根でなかったのがせめてもの不幸中の幸いかも……)
すると出るわ出るわ、よく見ると会社の多くの人が何かしらの怪我をしているではないか。そしてひとつひとつ聞いていくと、ごぼうの「ささがき」を作っているとき、餅つきの臼の熱湯をあけようとした時……と、聞くだけで鳥肌の立つようなあまりにリアルな「痛い話」が飛び出すのだった。そして最後の大森さんは……。

他人の痛い話を聞くのは聞くだけで「痛い」。そして、冒頭に紹介したように、実際に痛い思いをしている人は本当に多い。コロナで自炊が増えた人も怪我をしないよう、鳥肌を立てながらも注意するための参考にしていただきたい。