台湾の蔡英文総統(photo by gettyimages)

キーワードは反中・初動・適材適所……見習うべき台湾のコロナ対策

疫病との戦いは「中国大陸との戦争」だ
日本が未だに新型コロナウイルスの感染封じ込めに四苦八苦している一方、同じアジアの島国である台湾は、早期に感染封じ込めを実現した。「台湾の奇跡」を生んだ台湾の危機管理能力は、コロナ対策の指針のみならず、今後の日本が平和と安定を維持する方途も示している。
米中の激突の実態を描くとともに、両大国の覇権のはざまを日本が生き抜く方法を示した近藤大介氏による現代新書の新刊『ファクトで読む 米中新冷戦とアフター・コロナ』から、その一部を紹介する。

「台湾の奇跡」を生んだ3つのキーワード

新型コロナウイルスは世界のあらゆる国と地域に、「平等に」蔓延していきました。

そんな中で、圧倒的にコロナ対策に成功したのが台湾でした。世界中が「台湾の奇跡」と絶賛し、2020年8月には、アメリカのアレックス・アザー厚生長官が「台湾の奇跡に学ぶ」として、中国の反対にもめげず訪台したほどです。

 

台湾は九州と同じくらいの面積の島で、人口は2360万人。日本の人口の約5分の1(19%)です。それが、2020年12月10日現在での新型コロナウイルスの感染者数は724人で、死亡者数は7人。同時期の日本は、感染者数が17万3054人で、死亡者数は2512人。台湾の感染者数は日本の0.42%、死亡者数は0.28%にすぎません。まさに、日本とはケタ違いの感染防止を実現していることが分かります。

台湾には、「台商」と呼ばれる中国大陸在住のビジネスパーソンが約80万人もいて、中台関係が悪化しているとはいえ、中国との往来は盛んです。本来なら中国に準じる数の感染者が出ていてもおかしくありません。

それなのに、なぜこれほど少ないのでしょうか。台湾は日本と同じ「島国」であり、「台湾模式」(台湾モデル)は日本の今後の防疫の参考になると思います。

私は、「台湾の奇跡」を成功させたポイントは、「反中」「初動」「適材適所」という3つのキーワードにあると見ています。

感染症との戦いは「中国大陸との戦争」

まず「反中」について述べます。

蔡英文総統は、2020年1月11日の総統選挙で、台湾憲政史上最高得票数となる817万231票も獲得し、再選を果たしました。私はこの時、1週間近く台北で総統選挙の取材をしましたが、蔡英文総統が再選を果たした最大の要因は、ぶれない反中政策でした

簡単に言えば、2360万台湾人は、「近未来の台湾が香港のようになってしまうのは嫌だ」と思ったわけです。「香港のように」というのは、2019年6月以降続いた香港での大規模デモに対する厳しい締めつけのことで、その1年後には、事実上「一国二制度」の終焉を告げる香港国家安全維持法が施行されました。

香港の大規模デモは鎮圧された(photo by gettyimages)

蔡英文総統にとっての新型コロナウイルス対策は、こうした反中政策の延長線上にあったのです。そのため2月初旬の段階で、まだ春節の大型連休中であるにもかかわらず、中国大陸からの航空便をストップしました。台湾には、中国大陸出身で台湾人男性に嫁いだ「大陸新娘」も大勢いますが、水際対策を優先したのです。

また蔡英文政権では、「新型コロナウイルス」とか「COVID-19」などという呼称は使わず、始めから現在まで一貫して「武漢肺炎」と呼んでいます。「中国の武漢が発生源であるウイルス」であることを周知徹底させるためです。民進党幹部は私にこうも言いました。

「台湾では、中国人民解放軍がいつの日か、台湾に細菌兵器をばらまくことも想定している。つまり『武漢肺炎』との戦いは、中国大陸との戦争でもあるのだ」

たしかに「指揮官」という肩書きで最前線に立つ陳時中・衛生福利部長は、戦時の軍隊の司令官のようです。単なる「ウイルスとの戦い」と考える日本、「中国との細菌戦争」と捉える台湾――政府の対応と国民の反応の真剣さに、彼我の差が出たと言えます。

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