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今どうなっているの? 新型コロナの治療薬とワクチン開発の最前線

これで基礎知識が整理できます
新型コロナウイルスは何者なのか? その謎に迫るためNHKスペシャル取材班はいくつもの科学論文を読み解き、世界トップの研究者たちにインタビューを重ねてきた。その成果から生まれた番組がNHKスペシャル「人体vsウイルス~驚異の免疫ネットワーク~」(2020年7月4日放送)だ。番組内容だけでなく、そこでは紹介しきれなかった最新情報も含めて『たたかう免疫 人体vsウイルス真の主役』としてこのたび書籍化された。
新型コロナウイルス感染による重症化や死を避けるための切り札として期待されているのは、治療薬とワクチンだ。今、世界中で活発な治療薬、ワクチンの開発が続いている。本書では番組内容に加え書籍化に伴い、その現状について、番組の監修者のひとりである免疫学者で、大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之さんに取材、有益な情報を提供していただいた。

[治療薬]トランプ氏に投与された薬も承認へ

細胞に侵入した新型コロナウイルスは、RNAポリメラーゼと呼ばれる物質(酵素)を使って自らの遺伝物質のコピーを作る。このRNAポリメラーゼに作用してウイルスのコピーを作らせない働きをするのが、日本で2020年の5月初めに新型コロナウイルスの治療薬として承認されたアメリカの製薬会社ギリアド・サイエンシズが開発した「レムデシビル」だ。

ギリアド・サイエンシズ社。Photo by GettyImages
 

もともとエボラ出血熱を治療するために開発され、コンゴ民主共和国で2019年8月まで臨床研究で使用された薬だ。臨床試験の結果、ほかの治療薬のほうが効果が高かったため、エボラ出血熱用としては使用されなくなったものの、ウイルス感染症一般を治療する効果を持つことが知られていた。

一方、新型コロナウイルスに感染して重症化すると、免疫が暴走する。その暴走を鎮静化させる作用をするのが、関節リウマチや皮膚炎、喘息などに使われているステロイド薬の「デキサメタゾン」だ。日本では、これもレムデシビルに続いて7月に承認された。

2020年10月2日に感染を公表して世界に衝撃を与えた第45代米大統領のトランプ氏は、入院してわずか3日で退院したことでも人々を驚かせた。トランプ氏にはレムデシビル、デキサメタゾンなどさまざまな治療薬が投与されたことが、医師団により明らかにされている。その中でも注目を集めたのが未承認のモノクローナル抗体だ。

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