新型コロナ感染で重症化する人としない人の違いは何から来る?

科学者たちの闘いの最前線に迫る
NHKスペシャル取材班

一方で、この論文の著者らは、アメリカ先住民に新型コロナウイルスなど複数のウイルスに強いHLAが多く見られた理由について興味深い仮説を立てている。

 

500年前、ヨーロッパ人がアメリカを植民地化したとき、先住民は天然痘などの新たなウイルスにさらされた。実際、歴史的な記録では、先住民の相当な割合がこうした新たな感染症により命を落とした。その過程で、HLA遺伝子に選択圧が強くかかり、ウイルスに強く結合するHLAが先住民のあいだで増えたのではないか。HLAの地域差は、感染症との戦いの歴史を反映しているのだ。

重症化する人としない人を調査

これまでHIV、肝炎ウイルス、結核菌などのさまざまな感染症で、病態の進行にHLAがかかわっていることが明らかにされている。新型コロナウイルスでもHLAが重症化にかかわっているのではないか。それを調べるのが、4月に立ち上がった国際プロジェクト「HLA COVID―19」だ。

骨髄ドナーのデータバンクなど既存のHLA遺伝子のデータベースに登録された人で、新型コロナウイルスに感染した人、新型コロナウイルス感染後に新たにデータベースに登録する人の協力を得て、HLA遺伝子とウイルスの遺伝情報を比較し、両者のどんな組み合わせが重症化にかかわるのかを調べる計画だ。

HLA遺伝子に限らず、新型コロナウイルスに感染して重症化する人、軽症ですむ人の違いを、広くゲノムレベルで調べて明らかにしようとしているのが「COVID―19 Host Genetics Initiative」だ。イギリスのUKバイオバンク、フィンランドのFinnGen、日本のバイオバンク・ジャパンなどのデータベースをもとに、登録者で新型コロナウイルスに感染した人の許可を得て、データを解析する。感染する側の遺伝情報のどんな特徴が、重症化につながるかがわかれば、きめ細かな治療が可能になるはずだ。

それにしてもなぜ生命の進化は、どんな異物にも対応できる万能のHLA、つまりあらゆる異物を敵として捕まえられる「手」のかたちを選ばなかったのか。そうすればどんな感染症にも対応できるはずだ。

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