2020年3月9日時点で101円を記録し、一時111円まで戻したが、それ以降2020年の年末にかけて、米ドル安、円高となり、徐々に下落傾向となった。ドルを購入するにはもってこいの状況だが、この相場について松本氏は「ドルが弱くなった結果」と語る。
「コロナショックでアメリカが緊急事態宣言を出した3月あたりで1ドル=101円を付けました。円が高くなったというより『ドルが弱くなった』ということです。これだけ景気が悪いわけですから、日本も国債を発行して経済対策を行っていますが、アメリカも同じようにドルの供給を増やしています。
単純に言えば、世界にあるドルの量が増えている状況。マネーが溢れるとよくいいますが、ドルは基軸通貨ですから、それが溢れて行き場を無くしている状況なのです」
この動きは大きな変化のように見えるが、為替の取引にも影響しているのだろうか。
「直近四年間で年間のドル円の変動率は10%以内なんですよね。例えばドル円=105円で10%であれば10円程度しか動かない。15〜20年前は、年間平均で18〜20円動いてるんですよ。だから変動率が半分になっているのです。
やはり、動きがあるものに投資家は注目します。1万円が2万円に化ける暗号資産や、連日高値を更新し、テスラのような化け物株が出てくるNY株式市場などにはお金が集まっていきました。一方で為替の方は前述の通り、安定した相場でした。まさに現時点では次の『お金の収容先』を探っている状況です」
コロナショックによって、投資家の心理としては自身の資産を守りたいと考えるのは当然だ。そういった意味ではFX業界にはどのような変化をもたらしたのだろうか。
「為替自体が外的環境で上下することはそうそう多くはありません。一番の変動要因は金利動向と言えます。金利が高い通貨にはお金が流れ、低い通貨には流れないのが原則です。ただ昨年であれば、ドルでいうと米中貿易戦争、ユーロならブレグジットや独メルケル首相の退任など、様々な不安要素があった。そのため結果的に円高の傾向になったとみえます」